Popular ALBUM Review |
|
「ブラッド・フロム・スターズ/ジョー・ヘンリー」
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/EICP-1269) テディ・トンプソン、ソロモン・バーク、アラン・トゥーサン、エルヴィス・コステロ、エイミー・マン、ジェイコブ・ディラン。現在の音楽界の良心と呼べるような人たちの作品をつぎつぎとプロデュースし、さらには義姉マドンナとのコラボレーションも実現させるなど、ここ数年、興味深く実り豊かな創作活動を勢力的に展開してきたジョー・ヘンリーの新譜。シンガー・ソングライターとしてはすでに20年のキャリアを持つ彼にとっては、07年の『シヴィリアンズ』につづく新作となるものだ。アコースティックな音を核に、自由に、柔軟な姿勢でルーツ音楽に取り組んできた彼が、ここでは広い意味でのブルースに取り組んでいる。深くて、強い手応えを感じさせる仕上がりだ。ベテラン・ギタリスト、マーク・リボットが素晴らしい演奏を聞かせていて、さらにはヘンリーの17歳の息子(サックス)参加している。(大友 博)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ザ・リッジ/クリス・ジャガー」(BSMF RECORDS/BSMF-2135)
ミックの弟、クリス・ジャガーのニュー・アルバム。カントリー・フレヴァー溢れた、実にプリミティヴな味わいのグッド・ミュージックが全面を包み込む。サマセットの自宅納屋でのレコーディング。ペンタングルのメンバーだったダニー・トンプソン、ソフト・マシーンにも在籍したこともあるジョン・エスリッジ、カーラ・ブレイのメンバーとして活躍しつい先ごろソロ・アルバムを発表したばかりのジャズマンのアンディ・シェパードや地元、サマセット在住のミュージシャンらクリスの音楽仲間がジョイント。亡くなった両親とのメモリーを歌った「The Photograph」など、自らの物語を綴っている。実に心温まるサウンド、ストーンズ・フリークはもちろん、多くの音楽ファンにじっくりと味わっていただきたい。(Mike M. Koshitani)
|
Popular ALBUM Review |
|
「インプレッションズ/喜多郎」(HEIグローバル・エンタテインメント/ASCM-6059)
喜多郎の約2年ぶりになる新作は、北京五輪の総合演出を務めた中国映画界の巨匠チャン・イーモウ監督が演出する舞台“印象西湖”のために書き下ろされた作品だ。杭州、西湖の一角にステージが設営されその広さは約2.6平方キロに及び、物語は地元につたわる民話「白蛇伝」がモチーフになっているという。大自然と音と役者と仕掛けが一体になったスペクタクル・ショーを容易に想像させてくれる音作りは一聴して喜多郎の世界そのものであることを感じさせてくれる。幻想的でスペイシーなサウンドはシンセサイザーの得意とするところだが、喜多郎の手にかかると楽器の存在など忘れさせてくれるし、ある種の浮遊感がまだ見ぬ舞台へと誘っているようにも思えてくる。(三塚 博)
|
Popular ALBUM Review |
|
「オールレディ・ライヴ!/デレク・トラックス」
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-2237)
通算6枚目のスタジオ録音作『オールレディ・フリー』がビルボード誌の総合アルバム・チャートで19位を記録したデレク・トラックス・バンド。15年にわたってライヴ・サーキットで学び、身につけてきたことを、総合的なアーティストとしても大きく成長したデレク自身がきっちりプロデュースして作品化できたことがそういった成果を生んだのだと思う。その自信と手応えを感じながらステージに立った彼らが、あらめたてジャム・バンドとしての力を存分に発揮したライヴEP。『オールレディ』収録の2曲、ブルース・スタンダード、『ソングラインズ』収録の「アイル・ファインド・マイ・ウェイ」、17分に及ぶ「マイ・フェイバリット・シングズ」。そして日本盤ボーナス・トラックのゴスペル・チューン「アップ・アバヴ・マイ・ヘッド」という構成。どうしてもデレクばかりに焦点が当てられてしまうが、バンド全体でつくり出すグルーヴ感もじつに素晴らしい。(大友 博)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ザ・ベスト・オブ・ジョー・ボナマッサ/ジョー・ボナマッサ」
(エイベックスエンタテインメント/NFCT-27205)
ジョー・ボナマッサはアメリカのブルース・ロック・ギタリスト。まだ32歳だが、これまでに9枚のアルバム(うち2作はライヴ盤)を発表、ビルボード・ブルース・チャートでは6作連続1位を獲得するなど、すでに大きな評価を得ている。イギリスではアメリカ以上の人気ぶりで、今年はロイヤル・アルバート・ホールでの公演を完全ソールド・アウトに。しかもエリック・クラプトンがゲストとして登場、「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」を共演して、ボナマッサのイギリス制覇に花を添えてくれた。その彼がついに日本上陸。本作は、ギター・マガジン監修による、日本企画ベスト・アルバムだ。9月には初来日公演も決定(インフォメーション・コーナーを参照してください)。ボナマッサの火傷しそうなギター・プレイ(陳腐な表現かもしれないが、この言い方がまさにピッタリと来る)が、もうじき日本を席巻する。(細川 真平)
|
Popular ALBUM Review |
|
「バイブル・ベルト/ダイアン・バーチ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-66901) 心豊かで安らぎを覚える新人が登場した。ダイアン・バーチはミシガン州出身だが、南アフリカ人の牧師の両親に従い南ア、ジンバブエ、オーストラリア各地を巡り、13歳で帰国した。それまでは教会音楽、クラシックのみだったが解禁。世俗音楽に囲まれる。彼女の音楽の底辺にはオールド・ソウル、ゴスペルがあり、まずピアニスト、次いでソングライター、歌手となっていくが、芯のある声は説得力があり、落ち着いたよき資質が伺える。この初アルバムはグラミー受賞のスティーヴ・グリンバーグ、ベティ・ライトほかがプロデュース。躍動感溢れるゴスペルの好唱「フォトグラフ」、キャロル・キングを思わせる「フールス」ほか、いずれも心満たされるものがある。(鈴木 道子)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ファイナリー・オールモスト・レディ/ラグバーズ」
(バッファロー・レコード/LBCY-439) 年間200本以上のステージをこなし‘ミシガン州で最もポピュラーなツアーバンド’とも称される5人組。今の時代にこういう各国の民族音楽の要素をベースにしたロックを奏でるバンドが人気を集め始めているのは注目に値する。今回のスタジオ録音3作目もケルト、ジプシー、アフリカン、メキシカン、オリエンタル。。。と国境を超えた多彩な音楽性ながらどの曲もポップ♪でかなりとっつきやすく、お客さんを‘楽しませる’術を心得ている。紅一点エリンのクセのない可憐な歌唱も魅力的。日本盤には去る5月に横浜で開催された≪グリーンルーム・フェスティバル≫出演時のライヴ音源をボーナス収録。(上柴 とおる)
|
Popular ALBUM Review |
|
「スウィング・ライヴ/サンセヴェリーノ」(オーマガトキ/OMCX-1226)
私のような門外漢でも、フランスの超人気者ステファヌ・サンセヴェリーノ(歌手/ギタリスト/作詞・作曲家)のライヴを聴けば、絶対ステージが見たくなるし、ご紹介もしたくなる。彼の雑食音楽は、ジャンゴ・ラインハルトの生んだマヌーシュスウィングにシャンソンレアリストの要素やパンク、各種民族音楽の下世話な存在感があり、スピード感、毒とユーモアに富んだ語り口と共に生命感がほとばしり出る。早口が浮き立つ「ばあちゃんの埋葬」、スウィング感も好調でゲンズブールを引き合いに煙草の害を歌いながらの「命は惜しいが吸っちまう」。日本人やアメリカ人も登場し思わず笑ってしまう「交通渋滞」では絶妙の口三味線も飛び出す。ジャンゴ生誕100年の来日記念盤は日本のSaigenji編集のもので、後半に向かって盛り上がっていき、圧倒的なスピード感で興奮へと巻き込んでいく。尚、来日公演は9月23日/杉並公会堂、24日/銀座・王子ホールほか。(鈴木 道子)
|
Popular ALBUM Review |
|
「Arigato/Hermin(ホ・ミン)」(OLD HOUSE/OLD-002) ちょっぴりはかなげな歌声ながら全体の印象はさわやかでキュート(これはハマリそう♪)。ピアノを弾き語る韓国の女性シンガー/ソングライター、ホ・ミンの本邦デビュー盤はこれまでの2枚のアルバムからセレクトされた6曲に書き下ろしの新作などを含めた全10曲を収録。アルバムの表題曲「ありがとう」など日本語楽曲も3曲。素朴なおしゃれ感覚を持ち、時にジャジーなタッチも(母国の芸術大でジャズ・ピアノを専攻)。音楽的な素養の豊かさを感じさせる彼女はこの9月で28歳。いわゆるソフト・ロック~渋谷系のファンにも歓迎されそう。そっと抱き締めたくなるような歌詞にも癒される♪(上柴 とおる)
|
Popular ALBUM Review |
|
「アンダー・ザ・カバーズ -グレイト・ポップ・パラダイス- /マシュー・スウィート&スザンナ・ホフス」(HEIグローバル・エンタテインメント/ASCM-6065) 1960年代ヒットのカヴァー集Vol.1に続きVol.2は期待通り?1970年代集。ツウをうならせる選曲のセンスをモットーとするマシューとスザンナ(元バングルス)のコンビだけに今回もワクワク。「ゴー・オール・ザ・ウェイ」「ハロー・イッツ・ミー」「すべての若き野郎ども」「マギー・メイ」「うつろな愛」「キラー・クイーン」といった一般的な大ヒットものに交じってG・デッド、F・マック、L・フィート、J・レノン、G・ハリスン、YES、ビッグ・スター(!)らのファンのみが知る?楽曲などが同じ目線で次々歌われる。ポップスを熟知し愛する二人ならではの全21曲(日本盤ボーナス・トラック含む)すべてが愛おしい。きっと1980年代集になると思われるVol.3(待ってます!)ではバングルスも二人で歌って欲しいなぁ♪(上柴 とおる)
|
Popular ALBUM Review |
|
「11:11格闘弦/ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ」
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP2340)*初回限定盤
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-2341)
超絶ギター・デュオ ロドリーゴ・イ・ガブリエーラの新作は、ジミ・ヘン、ピンク・フロイド、パンテラ、アル・ディ・メオラ、パコ・デ・ルシア等11人の偉大なるアーティスト達にインスパイアされた、至極の11曲である。今回『格闘弦』と邦題されたアルバムは、彼らが如何に力を入れて作り上げたかが伺える作品となっている。一部のオーバーダビングを除き、ほとんどの曲をスタジオ・ライヴ録音という至難の技で、エネルギーの満ち溢れたものとした。また、アコースティック・ギターのみにとらわれずエレクトリック・ギターをも使用している点も、彼らのこのアルバムに対する意欲のあらわれだろう。ラテンをベースにした無国籍ミュージックとでも呼ぶべきロドリーゴ・イ・ガブリエーラの一段の飛躍が聴ける力作だ。アル・ディ・メオラとパコ・デ・ルシアにインスパイアされたのであれば、1977年作品『エレガント・ジプシー』の「地中海の舞踏」の様なギター・バトルがあると、もっと邦題らしくなったのではないだろうか。≪初回生産限定盤/DVD付≫もリリース。(上田 和秀)
|
Popular ALBUM Review |
|
「マスターフル・ミステリー・ツアー/ビータリカ」
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-2338)
ビートルズとメタリカの融合なんて表現するとカッコイイが、『ジェイムズとヨーコのバッテリー』から始まり『トゥモロー・ネヴァー・カムズ』まで、マジなのかふざけているのかビートルズ・ファンの意見を二分するとことだが、個人的には決して嫌いではない。パロディではあるがなかなかのアレンジだし、演奏も及第点である。案外メタリカ・ファンの方がふざけるな、なんて言いそうだがどうだろう。このセットリストなら、充分にライヴでも耐えられる。以前、王様はビートルズがカヴァーし日本語で歌っていたが、それよりもオリジナリティはある。ヘヴィー・メタルを知らない世代でも充分に楽しめる1枚である。(上田 和秀)
|
Popular ALBUM Review |
|
「マイナー・ブルース/ケニー・バロン・トリオ」(ヴィーナスレコード/VHCD-1032)
今回、新契約したケニー・バロン・トリオの新作。いまいちばん脂ののっている黒人ピアニスト、ケニーはさすがにパワーとグルーヴ感があり、ジャズ・ピアノの本道をゆくプレイに圧倒される。しかし、決して回顧的ではなく、現代的な感覚とフレッシュなセンスにも豊んでいて、さすが現代のボスの感がある。1曲目の自作ブルース「マイナー・ブルース」はとくにソウルをたたえた快演。ほかはスタンダードで「ビューティフル・ラヴ」「ドント・エクスプレイン」「ハッシャ・バイ」も楽しく聴いた。(岩浪 洋三)
|
Popular ALBUM Review |
|
「デディケーテッド・トゥ・ユウ/カート・エリング」
(ユニバーサルミュージック/UCCO-1081)
ヒップなジャズ・シンガー、カート・エリングによるコルトレーンとハートマンの名作をベースにした彼らへのトリビュート・アルバム。カーリン・アリソンやイヴォンヌ・ウォルターに同じような企画の作品があるが、今回は、二人の出会いを語りで伝える「イージー・トゥ・リメンバー」、ユニークなフレージングによる「ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル」等カート独自の解釈による内容の全く異なる素晴らしい作品。リンカーン・センターで大勢の聴衆を集めてのライヴ録音で息の会ったローレンス・ホブグッドのトリオと弦楽四重奏団がバックをつけ曲によってアーニー・ワッツが客演して情緒豊かなテナーで盛り上げる。(高田 敬三)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ストレイタウェイ/吉野ミユキ」(What's New Records/WNCJ-2196)
吉野ミユキのスウィンギーでファンキーなサックス・プレイは実にエモーショナル、その情感溢れた演奏ぶりはいつも魅了される。このところ我が国のジャズ・シーンでめきめきと頭角を現してきている彼女の初のリーダー・アルバムが登場。ライヴ同様、パワフルで確実な、そしてドラマティックな世界が見事にクリエイトされている本作、全10曲中6曲がオリジナル。随所で味わえるどきっとされる斬新なフレーズ、そして何よりも気骨溢れる彼女ならではのサックスの音色が僕らリスナーを酔わせる。10年間、活動をともにしている三木成能(ピアノ)、矢野伸行(ベース、ストーンズ・ファン!)、正清泉(ドラムス)とのコンビネーションも見事だ。アルバム・タイトル・ソング、「M's Blues」「What Is True?」、そしてカヴァーの「Cherokee」(チャーリー・パーカー)などが特に気に入った。セルフ・ライナーノーツ/収録曲目紹介がこのアルバムをよりいっそう楽しくさせてくれる。ライド・オン!MIYUKI!!(Mike M. Koshitani)
|
Popular ALBUM Review |
|
「そのままの君/KISHIKO with MARIKO」(King's Horn Note/KHMN-1003)
1988年にポール・ジャクソンのプロデュースでアルバム「Amazing Grace」を発表、教会をはじめ多くのコンサートなどで歌い続け、10年前には日本ゴスペル・ベスト・アーティスト賞銅賞を受賞したKISHIKO。2006年に甲状腺癌で声を失うが、昨年みごとにカムバック、再び歌い始めた。その奇跡のカムバック・アルバムである。ジャズ畑出身でピアノも得意とするKISHIKOは、クラシック畑出身でカナダの教会でソロ活動を続け現在は日本に戻ってきて活動をしている娘のMARIKOと本作で初の親子共演。オリジナル作品を中心に、心癒されるふたりのゴスペルがみごとにハーモナイズされている素晴らしいナンバー9曲。カヴァー、ケルティック・ウーマンほかで知られるシークレット・ガーデン(ノルウェー出身のロルフ・ロヴランド&アイルランド出身のフィオンヌアナ・シェリー)の「You Raise Me Up」も実に聴き応えがある出来だ。(Mike M. Koshitani)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ニュー・ブレイン/ ハイライト・ライヴ盤」(東宝ミュージック/TOHO-M-0906)
1998年にニューヨークで初演された、ウィリアム・フィン作詞・作曲のミュージカル メA New Brainモ の日本版。今年(2009) 4月18日のシアター・クリエ公演をライヴ録音。「バネの唄」「カラマリ」「イエスの唄」「ひどい一日」「イーティング・アライブ」「ピアノが響いている」など、劇中の素晴らしいミュージカル・ナンバー28曲が収録されている。石丸幹二、マルシア、畠中洋、パパイヤ鈴木、樹里咲穂、初風諄、赤坂泰彦など、個性豊かなスターたちの歌唱が愉しい。(川上 博)
|
Popular ALBUM Review |
|
「プリーズ・プリーズ・ミー/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71001)
「ウィズ・ザ・ビートルズ/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71002)
「ハード・デイズ・ナイト/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71003)
「ビートルズ・フォー・サール/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71004)
「ヘルプ!/ザ・ビートルズ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71005)
「ラバー・ソウル/ザ・ビートルズ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71006)
「リボルバー/ザ・ビートルズ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71007)
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71008)
「マジカル・ミステリー・ツアー/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71009)
「ザ・ビートルズ/ザ・ビートルズ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710010,11)
「イエロー・サブマリン/ザ・ビートルズ」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710012)
「アビイ・ロード/ザ・ビートルズ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710013)
「レット・イット・ビー/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710014)
「パスト・マスターズ vol.1&2/ザ・ビートルズ」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710015,16)
「ザ・ビートルズ・ステレオ・ボックス・セット」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710021-36)
「ザ・ビートルズ・モノ・ボックス・セット」 (EMIミュージック・ジャパン/TOCP-710041-53)
全世界待望、ビートルズの全14作品ステレオ・リマスター盤が、9月9日に全世界同時発売される。発売となるアルバムは、オリジナルUK盤12タイトルと1987年に初CD化された『マジカル・ミステリー・ツアー』、そして『パスト・マスターズ vol.1&2』の2枚組アルバムを加えた、全14タイトルである。注目は、初期4枚のモノナル・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』、『ウィズ・ザ・ビートルズ』、『ハード・デイズ・ナイト』、『ビートルズ・フォー・セール』の初全曲ステレオCD化だろう。
『プリーズ・プリーズ・ミー』
先ずは、音楽の世界を変えた記念すべきデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』だ。1曲目の「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」には、驚かされた。楽器の位置はそのままに、気持ちが良い程に音圧を上げている。そしてエンジニア達も自慢げに話していたが、究極までにノイズをカットしているのだ。全編を通じて4人の歌声や演奏が若々しいのと、「ツイスト・アンド・シャウト」でのジョンのシャウトは、迫力と共に男の色気を感じる。(上田 和秀)
『ウィズ・ザ・ビートルズ』
ビートルズのステレオ分解がどれだけお粗末といわれようとも、ステレオでしかビートルズを聴いていない世代のひとりとして、このセカンドの再発などは狂喜乱舞といっても過言ではない。なにげに昔のステレオよりも格段に音がよくなってるし。そうした意味で「イット・ウォット・ビー・ロング」が鳴り出す瞬間は至極の恍惚に浸ってしまう瞬間だったし、「オール・マイ・ラヴィング」もこれでなくっちゃというアタック感と変な立体感に満ちていて、はあ~すっきりした。(高見 展)
『ハード・デイズ・ナイト』
初の主演映画のサウンド・トラック盤『ハード・デイズ・ナイト』は、タイトル曲「ハード・デイズ・ナイト」から全曲巧くステレオに振り分けられている。「アンド・アイ・ラヴ・ハー」では、ポールの美しいナチュラル・エコーのヴォーカルが楽しめ、スティール弦とガット弦によるアコースティック・ギターは、鮮やかなほどに異なった音色を聴かせる。(上田 和秀)
『ビートルズ・フォー・セール』
ビートルズのステレオ・ミックスの醍醐味を初期アルバムで一番で堪能できるのがこの『ビートルズ・フォー・セール』。それはこのアルバムをあくまでもステレオで聴いていないと、『ヘルプ!』から『ラバー・ソウル』へというとてつもない飛躍がいまひとつサウンドの変遷としてよくわからないからで、特にアコースティック調の「エイト・デイズ・ア・ウィーク」などはビートルズのサウンドへの意識の変化を如実に感じさせる。(高見 展)
『ヘルプ!』
主演映画第2弾のサウンド・トラック盤『ヘルプ!』は、名曲中の名曲「イエスタデイ」を収録し脱アイドルを歩み始めたアルバムである。タイトル曲「ヘルプ」は、ジョンにとってベスト・テイクと言わしめる程のテンションの高さが、一段と増したようだ。「涙の乗車券」では、初めてポールのベースが鮮明に聞こえる。「夢の人」は、イントロのギターの音色が素晴らしく、左右のギターの振り分けも見事の一言。「イエスタデイ」は、弦楽四重奏をバックに歌う美しいポールのヴォーカルと、ダウン・チューニングにより音程限界のギターが生々しい。(上田 和秀)
『ラバー・ソウル』
多くのミュージシャン達に影響を与え、自分たちの音楽指向も広がり始めた『ラバー・ソウル』は、「ドライヴ・マイ・カー」でベース・バンドへ変わっていく片鱗が見え、音作りも現代的となる。ジョージのシタールが印象的な「ノルウェイの森」は、ジョンのギターと良いバランスで左右に振られている。「ユー・ウォント・シー・ミー」のイントロで聴けるヴォーカルとハーモニーのエコーは美しい。「ミッシェル」は、完璧なアレンジが光る名曲だ。「消えた恋」は、時代を感じるギターのバッキングが聴けて嬉しくなる。「ウェイト」は、タンバリンやドラムと言った、リズム隊が頑張っている隠れファンの多い曲だ。(上田 和秀)
『リボルバー』
『リボルバー』は、サイケデリックの走りであり、スタジオにおける作り込みが始まったアバンギャルドな問題作だ。ジョージ初のA面1曲目となる「タックスマン」は、ジョージの歌い回しや癖といった所が良く分かるが、この曲からベース・バンドへ変身することとなる。「エリナ・リグビー」は、ロックンロール・バンドである彼らが、全く演奏しないことを許された音楽史上最高のアレンジの名曲だが、弦楽八重奏の演奏のキレが増し、ポールのヴォーカルとコーラスとのコントラストが鮮明となる。「アイム・オンリー・スリーピング」は、テープの逆回転も良く聞こえ、凝った音作りの意図が見る。「トゥモロウ・ネバー・ノウズ」は、ジョンのイマジメイションが爆発するこれぞサイケの隠れた名曲、この時代にこのアレンジは立派。(上田 和秀)
『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
今回のリマスタリングは重低音を厚くすることで音のまとまりを余韻に近いところまで拾い上げようとしているところがあるので、その効果がかなり前面に出てくるのは、たとえば、ストリングスのサウンドで、そうした意味でこの歴史的な名作はさらにその深みを増すことになった。この異常なまでの臨場感、「シーズ・リーヴィング・ホーム」のたゆたうような弦、そして「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の迫力はとてつもない。(高見 展)
『マジカル・ミステリー・ツアー』
同名テレビ映画のサントラ6曲とシングル5曲で構成された『マジカル・ミステリー・ツアー』は、全体的にエッジの効いた録音となり、細かい音まで良く聞こえる。このアルバムは、じっくり聞き込んで欲しい。今まであまり評価されていないアルバムが、隠れた名盤にランク・アップされても良い程の仕上がりである。(上田 和秀)
『ザ・ビートルズ』
『サージェント・ペパーズ』と並んで今回のリマスタリングで最大の驚きをサウンドとしてもたらしてくれるのがこの『ホワイト・アルバム』。それは、ただ刺々しくてばらばらだったとこれまで形容されてきたこのアルバムのサウンドがどこかオーガニックでまとまったサウンドとしてきちんと鳴ってしまっているからだ。この状態で聴いていると、あらためて大きな感動と4人への畏怖を想起させるとてつもないリマスタリングだ。(高見 展)
『イエロー・サブマリン』
ビートルズを主役にした同名アニメのサウンド・トラック盤『イエロー・サブマリン』では、「ヘイ・ブルドック」のイントロのリフが厚みを増し、「イッツ・オール・トゥ・マッチ」のフィード・バックは永遠に残響を残す。B面のジョージ・マーティンによるオーケストラは、各楽器のフォーカスがはっきりして非常に聴きやすくなった。(上田 和秀)
『アビイ・ロード』
名作『アビイ・ロード』もリマスターにより、非常にテンションの高いものに生まれ変わってしまった。A面のどの曲も演奏の音圧レベルが上がり力強いものとなったが、ヴォーカルとのバランスがくずれ、良い意味でのとろみと言った様な表現が無くなってしまった。それでもB面のメドレーは、テンションが上がった分演奏はより一層の迫力を増し、静寂の中の虫の声といったコントラストも見事に再現され、ラストまでノンストップの盛り上がりを聴かせる。「ジ・エンド」は、ビートルズの終演を告げ、誰もが感傷的になる。(上田 和秀)
『レット・イット・ビー』
『サージェント・ペパーズ』同様ストリングスが多用され、さらにかなり悪条件な状況でレコーディングされた音源であるため、今回最も飛躍的に音がよくなったアルバムのひとつ。しかし、そのせいでフィル・スペクターの功罪がさらに明らかになってしまってもいて、この「ロング・アンド・ワインディング・ロード」などはポールが赤鬼と化して聴いているに違いない。逆に「ゲット・バック」などのフルボディ感は素晴らしい。(高見 展)
『パスト・マスターズ vol.1&2』
『パスト・マスターズ vol.1&2』は、vol.1がシングル曲、ドイツ語バージョン等を中心にファンの興味ある楽曲の編集となっている。初期の曲はリマスターが効果的にレベル・アップしてくれる。vol.2は、アメリカ盤『ヘイ・ジュード』の収録曲を中心に編集されている。その中でも一番人気の「ヘイ・ジュード」が、ポールのヴォーカルも含めライヴ感覚なのがいい。「ドント・レット・ミー・ダウン」は、リマスターによりそのルーズ感が一層高まった。「アクロス・ザ・ユニバース」では、鳥の声や羽の音そして子供の声も非常にリアルに再現され、演奏もテンションが高い。(上田 和秀)
ビートルズ・ファンのみならず全音楽ファン必聴の14タイトルである。リマスターにより21世紀に蘇ったビートルズを自身の感性で感じて欲しい。この14タイトルは、必ず誰にでも新しい発見をもたらしてくれるだろう。また、これら14タイトルとミニ・ドキュメンタリーを1枚にまとめたDVDをボックスに収納した、お得なステレオ・ボックス・セットが同時発売される。更に、モノラル・ファン待望のモノ・ボックス・セット(注目の『ヘルプ!』から『ザ・ビートルズ』までのモノ・ヴァージョン初CD化含む)は、初回生産限定発売である。(上田 和秀)
|
Popular ALBUM Review |
|
「トゥゲザー/マーヴィン・ゲイ&メリー・ウェルズ 」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94161)
「テイク・トゥー/マーヴィン・ゲイ&キム・ウェストン」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94162)
「ユナイテッド/マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル 」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94163)
「ユアー・オール・アイ・ニード/マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94164)
「イージー/マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94165)
「ダイアナ&マーヴィン/ダイアナ・ロス&マーヴィン・ゲイ」 (ユニバーサルミュージック/UICY-94168)
マーヴィン・ゲイはモータウン時代に同レーベル所属の女性アーティストとデュエット・アルバムを発表した。ここにご紹介する6枚である。まずは「Tow Lovers」「My Guy」のメリー・ウェルズとの『トゥゲザー』、丁度「My Guy」がナンバー・ワン・ヒットしていた1964年の作品集。この頃はメリーの方が格上で、彼女の相手役としてマーヴィンが選ばれた。シングルとしてリリースされた「What's The Matter With You Baby」はB面の「Once Upon A Time」とともに両面ヒットとなり、当時さかんにFENでオン・エアーされていたのを想い出す。メリーはこのあとすぐに20世紀フォックスに移籍している
『テイク・トゥー』は、「Takes Me In Your Arms(Rock Me Little While)」のヒットで知られるキム・ウェストンとマーヴィン。ふたりは64年に「What Good Am I Without You」に小ヒットさせたことがあるが、何といっても僕らの記憶にはっきり残っているのが「It Takes Tow」だ。67年にR&Bチャート4位の大ヒット。そのナンバーをフィーチャーしてのアルバムで、前曲も収録。キムも「It Takes Two」のヒットのあとMGMへ移籍してしまった。
個人的な話をさせてもらえば、マーヴィンとのデュオといえば、やはり一番の思い出は70年3月に24歳の若さでこの世を去ったタミー・テレルとのコンビ・アルバム(と当時、僕らはよんでいた)。タミーは66年からシーンに登場していたが、翌年にマーヴィンとのデュオ・ソングのヒットでファンの注目を集めたのだ。とにかく可愛いソウル・シスターだった。『ユナイテッド』のオープニング・ソング、「Ain't No Mountain High Enough」がR&Bチャート3位を記録。その後、このナンバーはダイアナ・ロスでリバイバルしてナンバー・ワン・ヒット((R&Bとポップ・チャートの両方)。ソウル・ミュージックの名作中の名作と化した。何度となく六本木にあったソウル・バー≪ジョージ≫のジューク・ボックスにコインを投げ込んだことか・・・。その後(67~68年)「Your Precious Love」「If I Could Build My Whole World Around You(君との愛に生きて)」 も大ヒットした。
68年初頭、タミーはソロで「If This World Were Mine」を小ヒットさせたが、同年再びマーヴィンとのデュオで「Ain't Nothing Like A Real Thing」「You're All I Need To Get By」を大ヒットさせてしまう、両曲ともR%Bチャート1位に輝いた。『ユアー・オール・アイ・ニード』に収録されている。
そして69年のアルバム『イージー』である。レコーディング中、すでにタミーは病魔に襲われていて、後年に判明したことだがマーヴィンと歌っていたのはヴァレリー・シンプソンだったのだ・・。69年からタミーの死後にかけてマーヴィン&タミーのナンバーはB面ソングも含めて4曲チャート・インしたが、そのうちタミーが歌っているのは「What Your Gave Me」だけであった。ジャケットも写真ではないし、CD化もだいぶ遅れたことを記憶している。しかし、やっぱりタミーのマーヴィンとの最後の作品集として聴かずにはいられないのだ。
そして、マーヴィンは73年にソロになったダイアナ・ロスとのデュオ・アルバム『ダイアナ&マーヴィン』を発表した。シングル・ヒットした「You're Special Part Of Me(噂の二人)」「My Mistake(Was To Love You)」はじめとしてUKヒットしたスタイリスティックス・カヴァー「You're Everything」「Stop, Look Listen(To Your Heart)」など聴き応えある楽曲がボーナス・トラックも含めて収録。74年にトップ20入りした「My Mistake(Was To Love You)」で、当時新宿や六本木のディスコで踊りまくったことを・・・(Mike M Koshitani)
|
Popular ALBUM Review |
|
「ハワイアン・メレCD-BOX」
(ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント・ジャパン/GNCP-1030)
600曲超のハワイアン・ソングを収録した30枚組のCD-BOX。Kalani Po'omaihealani、Luka Kauhola、松浦ますみ(ラウロア)、田中とき子など実力派歌手が顔をそろえている。ハワイアン・メレ(歌)のタイトルどおり、全篇歌によって構成されている。神話に基づく歌、王族の歌、子供向けの歌、各島々の歌、自然への賛歌などさまざま。ハワイ音楽研究家の鳥山親雄さんが昨年編纂した「ハワイアン・メレ1001曲全集」(文踊社)の楽曲を、実際の演奏でできる限り収録しようというアイディアから生まれたものだ。書籍の方は1255曲を収録、しかもハワイ語が丁寧に翻訳され一曲ごとに解説が施されている。いってみればこのCD-BOXの解説書だ。楽曲がアルファベット順に並べられていて、事典的な香りが強いが、部屋や車中で流しっぱなしに聴いても楽しめるし、癒し効果は抜群だ。(三塚 博)
|
Popular CONCERT Review |
|
「ブライアン・ブレイド」 7月19日 Billboard Live TOKYO ジャズ・ドラマーとしての活躍が突出して見られがちなブライアン・ブレイドはまた、ジャンルにとらわれないシンガー/ソングライターでもある。ボブ・ディランやジョニ・ミッチェルのバックを務めた経験、ダニエル・ラノワとの交流も彼の“自作自演意欲”を刺激したのかもしれない。その一面を初めて大々的に開陳した新作『ママ・ローザ』の、カヴァー・ツアーとなるのが本公演だ。編成はギター、キーボード、ベース、そして女性のバック・ヴォーカル。そこにブレイドのギターによる弾き語りが加わる。曲によってはドラムを叩きながら歌っていたが、それはほんの一部。音量を極端に抑えたサウンド作りのなかから、ブレイドの張りのある声がくっきりと聴こえてくる。「アット・ザ・センターライン」が強く印象に残った。(原田 和典)
写真:土居 政則
|
Popular CONCERT Review |
|
「シーウィンド」 7月21日 Billboard Live TOKYO
1970年代に日本でも人気フュージョン・グループに躍り出たシーウィンドが今年、29年ぶりとなる新作『リユニオン』をリリース。そんな待望のタイミングでの来日公演を六本木で観た。同作は過去作からのセルフ・カヴァーを含む選曲で、当夜は新旧のレパートリーを交えた、結成33年のすべてを集約したプログラムとなった。ヴォーカルのポーリン・ウィルソンはあの頃と変わらないルックスと歌唱で、客席の多くを占めた長年のファンにアピール。シーウィンドが女性ヴォーカルを含めたフュージョン・バンドにとどまらないことを、ステージで明かしたインスト2曲に注目した。「バンドの前身時代に我々全員が影響を受けた」とのMCに続いて演奏したウエイン・ショーター曲「イエス・オア・ノー」と、追悼曲「ウエイン」で、シーウィンドの別の一面を体感。ハワイ生まれの老舗バンドに、青春の良き時代が重なったのだった。(杉田 宏樹)
写真:Gousuke Kitayama
|
Popular CONCERT Review |
|
「ハーレム・ナイツ Vol.8」7月29日 横浜/ランドマークホール
ニューヨーク・ハーレムを舞台に活動するミュージシャンを招聘してのライヴ・シリーズで今年が8回目。ロン・グラント(vo)をはじめ、私たちがあまり接する機会のないエンターテイナーたちがエネルギッシュなステージを披露する。今年収穫だったのは女性歌手のキンバリー・ニコール。パンチの効いた歌声は、かつてアポロ劇場で聴いたメルバ・ムーアを思わせた。もう一人はタップダンサーのオマー・エドワーズ。ファンク・タップを次々に披露して会場中を大いに沸かせた。ステージの後半ではミスター・ソウルマンなる謎の人物も登場してジェームス・ブラウンばりのパワー全開、ハーレムのクラブにいるような錯覚すら覚えた。地味な企画で、関係者の熱意だけで持っているのではないかと推測するが、貴重な企画でありぜひ続けてもらいたいものだ。(三塚 博)
写真:吉田太郎
|
Popular CONCERT Review |
|
「ハーレム・ナイツ Vol.8」 8月1日 横浜/ランドマークホール ニューヨーク・ハーレム直送のショーが横浜で味わえる夢のようなイベントが、このハーレム・ナイツだ。第8回目となる今回も立ち見まで出る大盛況。歌ありダンスあり、ブルースあり、R&Bあり、ファンクあり、ジャズありの、多彩で楽しいセッションが3時間近くにわたって繰り広げられた。いまやハーレム・ナイツの顔というべきタップダンスのオマー・エドワーズはセロニアス・モンクの「エピストロフィー」を無伴奏で踊り、初来日のキンバリー・ニコールはエッタ・ジェームズの当たり曲「アット・ラスト」で若手とは思えない円熟味を披露。プロデューサーとしても著名なロン・グラントは「オー・ハッピー・デイ」等で、包容力ゆたかな喉を聴かせた。当日、会場にいた誰もがこのイベントに大満足したことだろう。(原田 和典)
|
Popular CONCERT Review |
|
「マリーナ・ショウ」 8月3日 Billboard Live TOKYO
「ドゥリーム・チームよ!どう? 楽しんでる?」。終盤にさしかかる前のマリーナのMCだ。まさにマリーナの言う通り、本国米国でも実現する事はないと思われる、錚々たるメンバーによる≪夢のライヴ≫が日本のBillboard Liveで実現した。デビット・T・ウォーカー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、ハービィー・メイソン(ドラムス)、ラリー・ナッシュ(キーボード)。あの名盤『フー・イズ・ズィス・ビッチ・エニウェイ?』(75年/Blue Note)の主要レコーディング・メンバー達が、アルバム全曲をライヴで演奏したのである。人気のデビット・Tをフューチャー、そしてもちろんマリーナのヴォーカルが絡む。それは絶品だった。歌手のバック・バンドのお手本ともいえる各ミュージシャンのシルキーな演奏は、今の若者たちの心を果たしてつかんだのか? 1曲目の「You Been Away Too Long」が始まったその瞬間から、それはまさにレコードと同じ音だった。名歌手と名演奏者によるライヴ。昨今、滅多にない組み合わせのステージに感動。帰宅してすぐ『フー・イズ・ズィス・ビッチ・エニウェイ?』アルバム全編を聴いてみた、「やっぱり、同じサウンドだった」と改めて感激した・・・。(三塚 博)
写真:acane
|
Popular CONCERT Review |
|
「ロマン・アンドレン」 8月8日 COTTON CLUB
アルバム『フアニータ』がロング・セラーを続けているキーボード奏者、シンガー/ソングライターのロマン・アンドレンが来日した。ブラジリアン・サウンドを貴重としたファンキーな音作りから“スウェーデンのデオダート”ともいわれているようだが、初めて生演奏に接した僕が驚いたのは、アコースティック・ピアノによる強力なタッチ。ヴォーカル・パートや他の楽器がアドリブをしているときでも、バックで絶えずキャッチーなリフをリズミカルに送り込み、ソリストを鼓舞する。演奏スタイルこそ違うが、そのアプローチは僕に往年のホレス・シルヴァーを思い出させた。この日のステージは『フアニータ』収録曲のほか、近日発売の新作からのナンバーもたっぷり披露。アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲カヴァー「Vivo Sonhando」も楽しかった。(原田 和典)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:土居政則
|
Popular CONCERT Review |
|
「ジョー山中 ニューアルバム・リリース記念ライヴ」 8月8日 クロコダイル
8年振りの新作「Reggae Vibration IV~Going Back To Jamaica」のリリース記念ライヴ。アルバム・オープニングに収録のウェイヴ・サウンドにのって、腰まで届くドレッド・ヘアに白いジャケット姿のジョー山中が登場。タイトルソング「Going Back To Jamaica」からスタートしたライヴは、アルバムの収録曲はもちろん、彼がリスペクトしてやまないボブ・マーリーの「No Woman No Cry」や、ジャマイカン・ソングのスタンダード「Banana Boat Song」、場内をコール&レスポンスの渦に巻き込んだ「Stand By Me」など、おなじみの曲も交え約3時間続いた。ラストには'77年の大ヒット「人間の証明のテーマ/Proof Of The Man」をレゲエ・アレンジで熱唱し場内を
大いに沸かせた(このヴァージョンはアルバムにも収録)。昨年からはソロと平行して、フラワー・トラヴェリン・バンド(FTB)のリード・ヴォーカリストとしても活躍中という事もあり、会場に居合わせたFTBのドラマー、ジョージ和田が加わって代表曲である「SATORI」を披露。ジョーの突き刺すようなヴォーカルとジョージの重いドラムが強烈なバトルを展開。ハード・ロックとレゲエ・・一見、相反するジャンルのように思えるが、ロック、ポップス、R&Bなどの洋楽が“ポピュラー”というひとつの言葉で括られていた1960年代から歌い続けている彼にとっては、音楽をジャンル分けすること自体がナンセンスなのかもしれない。還暦を過ぎてなおフロンティア・スピリッツを持って走り続けるジョー山中は凄い。(町井 ハジメ)
写真:中村嘉昭(Yoshiaki Nakamura)
|
Popular CONCERT Review |
|
「ビル・タピア Bill Tapia Japan Live」 8月9日 渋谷/渋谷JZ Brat 貴重なミュージシャンが来日した。ビル・タピアは101歳の現役。ウクレレと歌を歌う。ハワイ・オアフ島出身で、伝説のジョニー・ノーブルのバンドでも活躍したが、ジャズのギター、バンジョーに転向して、戦後は米本土に渡り、ルイ・アームストロング、ビリー・ホリデイとも共演したという。一時引退していたが、家族を相次いで亡くし世をはかなんでいた時に再びウクレレと出会い、生きがいを見つけて現役復帰した。今はカリフォルニアに住んでいる。
歓迎会と9日のステージを観た。赤いジャケットにネクタイの粋な姿で、生活も共にしているギタリストをパートナーに、円やかと言うより力強いウクレレ、ちょっとかすれた声で、「エクザクトリー・ライク・ユー」などのジャズとハワイアンを演奏する。よきフラダンスも加わった「ソフィスティケイテッド・フラ」などのハワイアンが軽妙で心地よく、私にはジャズにもフラの感覚が聞きとれた。最後にリクエストで歌った「ヤング・アット・ハート」は、「おとぎ話だってかなうさ。君の心が若ければ」という歌詞はビルにぴったりだが、高低の動きが大きく、ウクレレの魅力も出しにくい曲に思われた。いずれにしてもビルからは元気を一杯頂いた。尚、彼の元気の秘訣は、牛肉と生野菜をたっぷりとり、毎日のウォーキング、そして何よりもウクレレを弾くことだそうだ。大好きな日本へはまた必ず来ると約束した。(鈴木 道子)
|
Popular CONCERT Review |
|
「ナ・レオ」 8月19日 Billboard Live TOKYO
ハワイの人気女性トリオ、ナ・レオの初日のステージを六本木のビルボード・ライヴ東京で聴いた。グループ結成25周年、昨年に続く2度目の来日だ。軽快な「Ku'u Hoa」で幕を開け、ピーター・ムーンの名曲「Hawaiian Lullaby」をアンコール曲に、全16曲をスマートに披露した。「3人ともクラシック・ハワイアン・チューンばかりでなく、ポップスやロックンロール、クラシックも好き」というだけに「Waikiki」「Sophisticated Hula」「Do The Hula」など日本でもなじみのハパハオレ・ソングに「パイナップル・プリンセス」「ブラックバード」「ポエトリーマン」、さらにはオリジナル曲を加えて、幅の広さと安定したハーモニーを堪能させる。5曲にソロのフラ・ダンスを登場させる演出もステージに色合いをつけていた。(三塚 博)
写真:Gousuke Kitayama
|
Popular BOOK Review |
|
「レコーディング・スタジオの伝説/ジム・コーガン&ウィリアム・クラーク著 奥田祐士・訳」(ブルース・インターアクションズ)
現在、映画≪キャデラック・レコード~音楽でアメリカを変えた人々の物語≫が公開中。シカゴのチェス・レコードや同レーベルのスタジオが若い音楽ファンの間で話題になっている。ストーンズの楽曲名にもある南ミシガン通り2120、ここのチェス・スタジオには何度か行ったことがあるが、想像していたよりずっと小さな建物だったことを思い出す。でもそこからはアメリカ音楽の歴史を変えた数多くの名作が誕生。アメリカにはそんなチェスばかりではなく、ザ・キング、エルヴィスでお馴染みのメンフィスのサン・スタジオ、同じくメンフィスのスタックス、デトロイトのモータウン、フィラデルフィア・ソウルのシグマ・サウンド・スタジオほか、多くのメッカとも呼ばれるレコーディング・スタジオが点在した。1950年代から70年代にかけて、それらのスタジオでは個性溢れる作品が生まれファンを魅了したのだ。本社は、そんなアメリカのスタジオ別に紹介しながらそこからどんなアーティストが巣立ちしそしてヒット作が放たれたかを、エンジニアほか関係者の証言を交えながら実にきめ細かく著わしている。アメリカン・ポピュラー・ミュージックの歴史書でもあるのだ。(Mike M. Koshitani)
|
Popular BOOK Review |
|
「シャープス&フラッツ物語 ~原信夫の歩んだ戦後とジャズ~ /長門竜也・著 瀬川昌久・監修」(小学館)
原信夫は本年末をもってシャープス&フラッツの活動を終えるという。原氏は今年3月ミュージック・ペンクラブ音楽賞の特別賞を受賞している。監修者の瀬川氏は本会の会員であり、著者の長門氏は広島市生れで、徳島大学を卒業し、現在はフリーのライターとして活動している。300ページを超える長尺本で、1951年から今年までの58年間に亘るシャープス&フラッツの活動を、バンド・リーダーでテナー奏者/原信夫の歩みを中心に詳細に記した一種の伝記本である。シャープス&フラッツは戦後のトップ・ジャズ・ビッグ・バンドとして君臨し、ダイナミックでスインギーな演奏を展開してきたが、前田憲男、山屋清、外人アレンジャーらによる傑出した編曲もバンドのレベルを高めたが、人気の点では原信夫の人間的な魅力によるところも大きかったのではなかろうか。一時は仕事をさばき切れず、二軍ともいうべき、ジュニア・バンドまで作って仕事をした。この原信夫の人柄や忙しい仕事ぶりもよく描かれているが、欲をいえば、原信夫の広い仕事ぶりと人気を表わすスターたち、江利チエミ、美空ひばり、ペギー葉山らと一緒に撮った写真をたくさん入れ、文章の方は少し簡潔にして、ポイントをしぼって記述した方がよかったのでなかろうか。戦後の日本のジャズの隆盛と共に歩んだシャープス&フラッツの歴史が一冊の本にまとめられたのは意義ぶかい。ただ、本の帯に綾戸智恵の推薦文がのっているのは、ちょっと不釣合いな感がある。最近共演しているとはいえ、シャープス&フラッツとはあまりうまく結びつかない。(岩浪 洋三)
|
Popular BOOK Review |
|
「the ウクレレブック」(三栄書房)
ウクレレが誕生して130年なのだそうだ。1878年にポルトガル人が持ち込んだ小型ギターがウクレレとして定着したという説に由来するらしい。ブラジルのカヴァキーニョ、インドネシアのクロンチョンといった出自を同じくする楽器もあるが、ハワイ生まれのウクレレはわが国の国民的な楽器といってもいい。「はなこさ~ん」という開放弦は私たちの音感に実によくマッチする。昭和期のハワイアン・バンドには欠かせぬ楽器であったし、ムード歌謡では歌に彩を添えた。最近ではジェイク・シマブクロやベテランのハーブ・オオタらがコンサートやCDで人気を博し、楽器にコンテンポラリー感が付加された。楽器店や書店に足を向ければウクレレ本は山ほどある。ちょっと食傷気味なところにもってきて「またまたウクレレ本か」、というのが第一印象だったが、誤解はほどなく解けた。主役が“ウクレレ”であること。つまり売り場の本棚にぎっしりと詰まった“教則本”の類ではなく、ヴィンテージものからユニークなもの、いま人気のウクレレまでさまざまな角度から紹介してくれるムックで、カラー写真を楽しみつつ、関係者たちへのインタビュー記事を読み進むうちにたちまち“通”になれる。付録のDVDもいい。ファンには垂涎のカマカやコアロハなど家内手工業的な製作現場を映像取材している。楽器特有の暖かさが伝わってくる。クリス・カマカが映像の中で、「ウクレレの選び方・買い方は?」の質問に答え、「手にとって弾いたとき、もう棚にもどしたくないと思えば、それがあなたにとって良いウクレレだと思います」の一言が印象的だ。(三塚 博)
|
Popular MOVIE Review |
|
「エリック・クラプトン&ジェフ・ベック LIVE the MOVIE!
2008年2月にマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたエリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドの公演と、07年11月にロンドンのロニー・スコッツで行なわれたジェフ・ベックのライヴが映画版で公開される(ベックは既発売DVDと同じ内容だが、EC/SWは2時間あったDVDの映像を90分に削ぎ落としている)。特筆すべきはそのサウンド。数値/技術面のことはよくわからないが、ともかくリアルだ。強烈な音圧で、しかも、ひとつひとつの音が、生々しく伝わってくる。ずっと昔、何度も映画館に足を運んでロック・フィルムを観ていたあの時代の感覚が甦ってきた。懐かしくて新鮮な感触、といったらいいだろうか。もともと、ロックの映像はこうやって観るべきものなのかもしれない。(大友 博)
今年、さいたまスーパーアリーナで歴史的共演を果たしたエリック・クラプトンとジェフ・ベック。今度は映画館で、両者のライヴ・ムーヴィーがダブル・ヘッドライナー公開される。作品は、『ライヴ・フロム・マディソン・スクエア・ガーデン』(クラプトン)と、『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』(ベック)。共に、映画館においてライヴ会場並みの臨場感あるサウンドを実現した“Cine Sound Version”となっている。昔はビデオ・コンサートなるものがよく開かれたが、これは最先端にして最高級のビデオ・コンサートと言っていいだろう。もちろん生演奏に勝るものではないが、限りなくそれに近い体験ができる。そして、演奏の細かいテクニックや音の隅々までをも楽しめるという点では、実際のライヴより上。変な言い方をするようだが、騙されたと思ってぜひ映画館に足を運んでほしい。(細川 真平)写真:(c)Danny Clinch/Class Act, Class Act
*9月19日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて先行ロードショー
*9月26日より、全国ロードショー!
http://www.cinemacafe.net/official/clapton-beck-movie/
|
Popular INFORMATION |
|
「吉野ミユキ『Straightway』CD発売記念ライヴ」
「スイングジャーナル」誌の人気投票/アルト・サックス部門にもチャート・イン、このところ多くのファンに注目を集めるようになった女性サックス奏者の吉野ミユキが『ストレイタウェイ』をリリース。初リーダー・アルバムだ、その美しい音を持ったパワフルなプレイはハートを射抜く!そのファースト・アルバムをフィーチャーしての関東エリア・ライヴがスタートした。(YI)
*9月4日 草加/Sugar Hill お問い合わせ:048-927-7489
*9月7日 渋谷/JZ Brat お問い合わせ:03-5728-0168
*10月17日 阿佐ヶ谷/MANHATTAN お問い合わせ:03-3336-7961
*10月24日 阿佐ヶ谷/ジャズ・ストリート 河北病院看護学校 講堂 お問い合わせ:03-5305-5075
*10月31日 東中野/Living Bar regalo お問い合わせ:03-3369-7221
*11月6日 新所沢/SWAN お問い合わせ:04-2924-4230
*11月10日 渋谷/Ko-Ko お問い合わせ:03-3463-8226
http://blog.livedoor.jp/gyuchan_jazz/
|
Popular INFORMATION |
|
「ジョー・ボナマッサ初来日公演」
9月2日、待望の日本企画ベスト・アルバム『ザ・ベスト・オブ・ジョー・ボナマッサ』をリリースするジョー・ボナマッサ(THEレヴュー参照してください)。初の来日公演も決定した。ロイヤル・アルバート・ホール公演を完全ソールド・アウトにし、そこでエリック・クラプトンと共演を果たした勢いのままに、最後にして最大の黒船が日本に上陸する!(SH)
*9月12日 福岡/Gate's 7
お問い合わせ:Gate's 7 /092-283-0577
*9月14日 大阪/BIG CAT
お問い合わせ:夢番地/06-6341-3525
*9月16日 東京/代官山UNIT
お問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション/03-5270-9999
|
Popular INFORMATION |
|
「喜多郎~Love & Peace Planet Music Tour」
米国ウェスト・コーストに活動の拠点を移し、今年4月にニュー・アルバム「Impressions Of The West Lake」(国内盤は9月2日発売)を発表した喜多郎が久しぶりに本格的な来日コンサートを東京、名古屋で行う。また≪」平城遷都1300年祭100日前記念コンサート≫への出演も決定している。東京オーチャードホールでのコンサートには中国の実力派女性歌手ジェーン・チャンのゲスト出演が決定している。(HM)
*9月21日 名古屋/愛知県勤労会館
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション/052-320-9100
*9月26日 東京/Bunkamuraオーチャードホール
お問い合わせ:キョードー東京/03-3498-9999
≪平城遷都1300年祭100日前記念コンサート≫
*9月23日 奈良県文化会館 国際ホール
お問い合わせ:コンサート事務局/06-7732-8787
秋川雅史、夏川りみ、壇ふみ他も出演・・・。
|
Popular INFORMATION |
|
「COLORFUL JAZZ CONCERT/THE BIG BANG ORCHESTRA PRESENTS ― オーケストラで巡るジャズの名曲と昭和歌謡 ―」
戦後の進駐軍時代から東京オリンピックの開催時期に向けての昭和30年代までに流行った日米のヒット・ソングの数々を山田壮晃のビッグバンド・オーケストラが甦らせる興味ぶかいコンサート。男性歌手の佐藤マサノリと、女性歌手の有桂が歌い、ゲストにうめ吉が出演する。なお、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンの会員、瀬川昌久が監修、岩浪洋三がトークで出演する。脚本は放送作家の中山ユキオ、桂夏丸が司会。「月光価千金」「テネシー・ワルツ」「センチメンタル・ジャーニー」などが歌われ、演奏される。(YI)
*9月29日 東京/文京シビック・ホール 小ホール 昼夜2回(昼15:30開演、夜19:00開演)
*お問合わせ:ビッグバンミュージック 03-3966-4946
http://bigbang-music.com/
|
Popular INFORMATION |
|
「第5回ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル」
第5回となるギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル、近く取り壊される銀座/歌舞伎座(1500席)で開催される。今年の出演者は渡辺貞夫グループとカナダ出身で15才の新進歌手ニッキ、それにヤマハ・ビッグ・バンド・ジャズ・コンテスト優秀バンド。(YI)
*10月27日 銀座/歌舞伎座
*全席無料 事前申込制 申込期間9月1日~10月10日
*お問合わせ:GIJF2009事務局(ランドジャパン内)03-5793-3524(10時~6時、土・日・祝除く)。
http://www.ginza.jp/ginzajazz/
|
Classic ALBUM Review |
|
「ブラームス:交響曲第1番ニ長調/サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」(EMIクラシックス、EMIミュージック・ジャパン/TOCE-90097~99)
インターネットからのダウンロード先行などで、発売以前から何かと話題になっていたラトルのブラームス交響曲全集が発売になった。それも日本ではCD3枚にDVD2枚がプラスされているという超徳用盤である。フルトヴェングラー、カラヤン時代、ベルリン・フィルは音楽的には完全な指揮者主導の道を歩んできたが、恐らく長期政権になるであろうラトルはベルリン・フィルの意見も取り入れた音楽作りをすることを表明している。今回満を持してリリースされたブラームスの 付録としてのDVDライヴ映像では両者の熱を帯びた一体感 がひしひしと感じられる。曲順にそって聴いてみると、第1番から第2番は徐々に、第3番から感情的な盛り上がりを見せ、最後の第4番最終楽章パッサカリアに於いて両者の熱演は完全な頂点に達する。このパッサカリアでこれほど強烈な印象を受けたことはない。(廣兼 正明)
|
Classic ALBUM Review |
|
「フジコ/フジコ・ヘミング」(HEIグローバル・エンタテインメント/AZCM-6050)
人気ピアニスト、フジコ・ヘミングのフジコ・レーベル第一弾で、ロンドンでレコーディングされた新作である。得意の作品を12曲集めたアルバムで、ヘミングの魅力がフルに発揮されている。この新作を聴いて、改めて彼女の魅力に惚れ直した。ヴァラエティに富んだ選曲で、ベートーヴェンの「ソナタ テンペスト 第3楽章」、ショパンの「ノクターン 第1番 第2番」、「華麗なる大円舞曲」、リストの「パガニーニによる大練習曲」、「愛の夢」、ドビュッシーの「月の光」などが演奏されている。彼女のピアノ演奏は熱い血の通った人間らしい表現がみられる。その点、彼女の弾く、ベートーヴェンやショパンは現代の人間が弾く音楽になっている点が心を打つのである。また大得意中の得意曲「ラ・カンパネラ」が聴けるのもうれしい。華麗な曲には彼女の個性が強く出ていて聴きものだ。(岩浪 洋三) |
Classic ALBUM Review |
|
「ピアノによるルロイ・アンダーソン/白石光隆」(キングインターナショナル/KKCC-3024)
群を抜いた技巧と意欲的なプログラミング、音楽性豊かな演奏で定評のある実力派ピアニスト白石光隆の最新盤は、昨年生誕100年を迎えたアメリカの作曲家ルロイ・アンダーソンの作品集。屈指のメロディー・メーカー、アンダーソンの珠玉の小品はポップス・コンサートの定番で、オーケストラに手がけられてきた。ところがここでは、「ブルー・タンゴ」「ラッパ吹きの休日」ほか代表作25曲を作曲者自身がピアノ用に編曲した版を使って演奏されている。しかもディスコグラフィの上でも珍重すべき世界初録音。センシャスな魅力とウィットに富んだ曲想をもつこれらの音楽が、名手・白石のピアノを得たことで、楽しい音楽はより楽しく、美しい音楽はより美しく奏でられ、また、瑞々しくポジティブな演奏が、聴き手の心に活力を与えるとともに、毎日の意識の砂塵のなかにいつしか埋もれてしまった宝物を掘りおこしたかのような幸せな気分にさせてくれる。(横堀 朱美)
|
Classic DVD Review |
|
「J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲 (全曲)/ジュリアーノ・カルミニョーラ(Solo Vn.)クラウディオ・アッバード指揮 モーツァルト管弦楽団」(キングインターナショナル/20-56738) *輸入盤
ブランデンブルク協奏曲と言えば、しかめっ面的な演奏が多い中、このDVDはイタリア的な明るさと研ぎ澄まされたテクニックによる、何とも爽快な演奏を聴かせてくれる。アッバードが2004年に自ら創設したイタリアのボローニャに本拠を置くモーツァルト管弦楽団は、現代とバロック時代の楽器と弓を見事に融合させ、彼ら独自の音の世界を作り上げている。6曲とも実に速いテンポで演奏されているが、このところバロック・ヴァイオリンを弾かせたら右に出る者はいない、と言われているカルミニョーラのソロは、チェロで特別参加のマリオ・ブルネロとともに驚くべき完璧さを保ち、他のすばらしいメンバーたちと新しいスタイルのブランデンブルク協奏曲を生み出した。有名な第5番では木管のフルート、第4番ではリコーダー、第6番ではヴィオラ・ダ・ガンバなどの古楽器を用いている。そして第6番以外ではアッバードが指揮をしている。もう一人第2番のトランペットを吹いたラインホルト・フリートリヒの名人芸も特筆に値する。(廣兼 正明) |
Classic CONCERT Review |
|
「ザ・カレッジ・オペラハウス公演《イドメネオ》」 7月10日 同オペラハウス
危うく難破しそうになったクレタ王イドメネオ(小餅谷哲男)は、命の助かった御礼に、帰国後最初に会った人間を生け贄として捧げると、海神へ誓う。ところが、こともあろうに、その相手は最愛の王子イダマンテ(並河寿美)であった。誓いを破ろうとして、海神の怒りをかう。やむなく、かけがえのない後継ぎを捧げようとするが、王子を愛してともに死のうとする王女イーリア(石橋栄美)の献身的な行為によって、海神の怒りもとける。
モーツァルトのオペラ・セリアは起伏に富んでいるが、小餅谷は内面の苦悩をテノールに託し、つぶやくようなレチタティーヴォが光った。石橋はよくとおるソプラノで一途な愛を表現した。ドイツで長年にわたりオペラの現場を踏んできた児玉宏の指揮は、ツボをよく心得て、繊細な音色からドラマティックな響きまで自在にオーケストラをうたわせて、出色の出来であった。(椨 泰幸)
写真提供:ザ・カレッジ・オペラハウス
|
Classic CONCERT Review |
|
「ロシア・ナショナル管弦楽団」 7月11日 ザ・シンフォニーホール
ロシアのオーケストラの中で初めて民間で運営され、1990年にスタートした。入団希望者が多く、競争率は30倍に達したという。指揮者のミハイル・プレトニョフによって設立され、選び抜かれた奏者たちを鍛え上げて、ロシア有数のオーケストラに育て上げた。プログラムの中ではチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」が鮮烈な印象を残した。最初の3楽章でぐいぐい押しまくり、最終楽章では一転してすすり泣く。行き所のないエネルギーが一挙に爆発し、その果ての悲しみ。そこには帝政末期の時代相を読み取ることも可能である。チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」でもソリスト川久保賜紀のもつしなやかな音楽性を巧みに引き出してくれた。マエストロとオケは卓越した実力をまざまざとみせつけてくれた。(椨 泰幸)
写真提供:ザ・シンフォニーホール |
Classic CONCERT Review |
|
「びわ湖声楽アンサンブル公演《魔弾の射手》」 7月20日 びわ湖ホール
滋賀県が設立したこの合唱団のメンバーは、テストで選抜され、報酬を受けて活動している。その中核は総勢16人と規模は小さいものの、選任指揮者(本山秀毅大阪音楽大学教授)からみっちり仕込まれ、同ホール芸術監督の沼尻竜典の指導も受けている。このたびの公演ではメンバーが勢ぞろいして、「名作オペラ」を中ホールで披露した。ずば抜けた力を発揮するほどの歌手はいなかったものの、すっきりした仕上がりで、まとまりの良さを印象づけた。有名な「狩人の合唱」ではこのアンサンブルの魅力が存分に発揮されたと思う。在籍年数が制限されているのは残念だが、ここで鍛えられた歌手たちは、よそからも出演依頼が多いと聞く。日本には数少ない公立ホール所属の合唱団の存在に注目したい。(椨 泰幸)
写真提供:びわ湖ホール |
Classic CONCERT Review |
|
「ミュージカル時の旅 東京吹奏楽団スーパーライブ」 7月22日 ティアラこうとう大ホール
ミュージカル指揮者の塩田明弘を指揮者として迎え本格的な歌劇の歴史を振り返って語ってもらい、喜歌劇から、三文オペラ、歌劇・ミュージカルにいたる過程がよく 理解できる絶好の機会であった。普段地下のオーケストラボックスにいる楽団をス テージ上に挙げた格好で、歌手に宝塚で「ベルサイユのばら」などを演じていた和音美桜と、舞台上で「レ・ミゼラブル」のオペラなどを実際に演じていた橋本さとしをソリストに迎えて、いわゆる演奏会形式で盛り上げた。喜歌劇「メリー・ウィドウ」から歌劇「トゥーランドット」や、ミュージカル「ミス・サイゴン」まで楽しく演奏した。さすが、1963年に創設されたプロの演奏家達がそろっていて素晴らしい演奏だった。(斎藤 好司)
|
Classic CONCERT Review |
|
「大野和士のオペラ・レクチャー・コンサート」8月3日 いずみホール
神奈川県立音楽堂で好評を博している「大野和士のオペラ・レクチャー・コンサート」が、大阪のいずみホールに登場した。天羽明恵ら第一線で活躍するオペラ歌手を何人も揃え、大野自身がピアノ伴奏を受け持つ豪華なレクチャー・コンサートとあって、チケットは完売。会場は満員の熱気に包まれた。レクチャーは、『椿姫』『リゴレット』『道化師』などポピュラーなオペラのアリアや二重唱を題材に、実演を交えながら、大野が音楽の中身を解き明かしていくスタイル。≪音≫が表現する人間感情の可能性を、日本の演歌との共通性も指摘しつつ、身振り手振りを交えて熱弁・熱演する大野に、客席は沸きに沸いた。リハーサルに立会って、大野オペラの創造過程を体験しているような、貴重な経験ができた一夜だった。(加藤 浩子)
写真:樋川 智昭 |
Classic BOOK Review |
|
「ヘンデル 創造のダイナミズム/ドナルド・バロウズ編 藤江効子・小林裕子・三ケ尻正・訳」(春秋社)
ヘンデルの没後250年を記念して、彼の生涯と作品を政治、社会、宗教、文化など多角的な視点から読み解いた大著の600ページに及ぶ邦訳が出版された。ヘンデル作品の校訂で名高いバロウズの編纂により、多岐にわたるテーマをジョン・バット、スティーヴン・ラリュー、ウィントン・ディーンなど、それぞれの専門家が分担して執筆している。≪創造の背景≫≪音楽の諸相≫≪上演をめぐる視点≫の3部からなり、訳注として関連人物&事項一覧、付録としてヘンデルの年譜、作品リストなどがついた労作。同時代バッハと比べて、ごく一部の作品を除いて親近感が薄い私たちの国で、大作曲家ヘンデルについて深く知り、考えるために大いに役立つ信頼度の高い貴重な書籍と言えるだろう。(青澤 唯夫)
|
Classic INFORMATION |
|
「ウィーン音楽祭in OSAKA」
音楽の都ウィーンゆかりの音楽家や楽曲を大阪で紹介する音楽祭。伝統あるウィーン・ムジークフェラインに出演し、昨年創立150年を迎えたウィーン楽友協会合唱団(60名)の演奏に注目したい。プログラムは次の通り。
*10月10日午後4時 いずみホール(以下同じ) シューマン「女の愛と生涯」など マティアス・ゲルネ
*10月13日午後7時 モーツアルト「ピアノ・ソナタ第6番」など ピアノはピエール=ロラン・エマール
*10月15日午後7時 ウェーバー「舞踏への勧誘」など名曲集 ウィーン・ヴィルトゥオーゼン
*10月18日午後2時 シューベルト「ピアノ五重奏曲(ます)」など 小倉喜久子と古楽器アンサンブル
*10月20日午後7時 シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」 貴志康一「さくらさくら」など いずみシンフォニエッタと中嶋彰子(ソプラノ)
*10月22日午後7時 ハイドン「天地創造」ウィーン楽友協会合唱団 関西フィルハーモニー 幸田浩子(ソプラノ)など
*10月24日午後4時 ブラームス「ドイツ・レクイエム」など。ウィーン楽友協会合唱団 大阪フィルハーモニー交響楽団、指揮大植英二、釜銅祐子(ソプラノ)など。なお同合唱団は1867年にドイツ・レクイエムを初演した。(T)
写真提供:いずみホール
お問い合わせ:06-6944-1188 http://www.izumihall.co.jp
|
Classic INFORMATION |
|
「マルク・ミンコフスキ指揮ルーヴル宮音楽隊」
フランス生まれで、今もっともエキサイティングな指揮者のひとり、マルク・ミンコフスキが、手兵のルーヴル宮音楽隊とともに来日する。両者のコンビは1980年よりバロック・オペラを中心に活躍、とりわけフランス・バロック・オペラやモーツァルト・オペラの演奏で注目を集め、世界最高のバロック・オーケストラのひとつという評価を得た。活気あふれたヴィヴィットな演奏は、古楽ファンを越えた支持を集めている。
今回は、得意のモーツァルトとラモーで構成されたプログラムに加え、没後200年を迎えたハイドンの「ロンドン交響曲」をとりあげる。ミンコフスキならではの、遊び心に満ちた新鮮な音楽づくりは、バロック・古典の魅力を再発見させてくれることだろう。(K)
Photo:PHILIPPEGONTIER/Na_ve
*11月5日 6日 東京オペラシティコンサートホールほか
お問い合わせ:03-5353-9999
http://www.operacity.jp
|
Classic INFORMATION |
|
「大野和士、リヨンと「ウェルテル」を語る~記者懇親会レポート~」
首席指揮者の大野和士率いるリヨン国立歌劇場の来日公演は、この秋話題の公演のひとつ。それに先立ち、8月18日に一時帰国中の大野が、記者懇親会を行った。
会見でのポイントは3つ。まず、大野がリヨンを選んだ理由だが、支配人のセルジュ・ドルニー氏が同世代で話がしやすいこと、市民に浸透しようという活動が盛んであり、結果、若い聴衆が多い点に惹かれたことが明かされた。
第2は、リヨン歌劇場のオーケストラの紹介。フランスではパリのオペラ座とここだけが劇場専属のオーケストラであること、メンバーがまだ若く、国際的であり、レベルも非常に高いこと、などが語られた。
最後に、今回の演目である「ウェルテル」についてだが、マスネの「トリスタン」というべき作品であること、また今回は、コンサート形式(以前Bunkamuraで行っていた「オペラ・コンチェルタンテ」の形式)で上演されるが、それだけに音楽の面白さが堪能できるはず、ということが強調された。
また冒頭では、大野が現在取り組んでいる、病院めぐりのコンサートの後援者によるスピーチもあり、「音楽から権威主義を取り払い」、「音楽を必要としているひとに音楽を届ける」「人類の理想、美しいものへの理想を見せてくれる」大野の姿勢への共感が語られて、充実した内容の懇親会となった。(K)
写真:言美歩 提供:Bunkamura
*11月1日 3日 Bunkamuraオーチャードホール
お問い合わせ:公演/Bunkamura 03-3477-3244 http://www.bunkamura.co.jp
チケット/Bunkamura 03-3477-9999
|
Audio What’s New |
|
「酔わせるピアノ音楽 親密さ溢れるジャズ・ヴォーカル・・・ラックスマンD-05」
ラックスマンの新世代SACD/CDプレーヤーのラインナップはD-08に始まり、本機で完成する。7月末発売のD-05は、シリーズの最大の特徴は、音楽配信が世界的に伸長を続ける時代に、あえて投資を行い自社製メカニズムLxDTM(Luxman original Disc Transport Mechanism)を初めて開発、搭載したことにある。
ベース筐体全体を金属製ブロックで剛体化した強固な構造のドライブメカニズムで、ディスクを乗せるローダーは厚手のアルミダイキャスト、不要な共振や振動を根本から排除した。注目すべきは、このドライブメカをセンターレイアウトでなくレフトサイドメカ・レイアウトとした。各ステージへ等距離で電流を供給するセンター電源というコンセプトを今回設計の中心に置いたからである。同時に物量を投入したアナログ回路を収納する容積の確保と、各種信号を最短経路で接続する目的で、アンシンメトリーなレイアウトを採用したのである。そうはいっても、主要な振動源であるメカを筐体の中心に置くことにはメリットがあり、補う意味でドライブメカ全体を剛体化し、それをサイドシャーシと一体化した。デジタル回路は、理論値132dBという高ダイナミックレンジ、高S/Nを誇るバーブラウン製DAC、PCM1792Aを中心に構築した。上位機(D-08,D-06)はch当たり1基を差動で動かすが、D-05はシングル駆動である。システムクロックの低ジッター化(70×10マイナス12乗Sec以内、従来比約1/100)を図るジッターリダクション機能を搭載した。
機能面を見てみよう。本機のDAコンバーター+アナログ出力回路のポテンシャルを、携帯オーディオプレーヤーのデジタル再生で活かせるように、同軸/光一系統のデジタル入力を備える。
他に上位機種との違いを整理しておくと、上位機は、SACDのDSD信号をそのままDACに送り込むDSDモードと、DSD信号(約2.8MHz)を専用LSIで88.2KHz/24bitのPCM信号に変換して送り込むPCMモードを選択できるが、D-05はDSDモードのみ。最上位D-08はメカ部にシャッター機構が付くが、D-06/05は省略、デジタル回路にD-08/06には、16bit→24bitのビットエクステンダーが搭載されるが本機は付かないといった違いである。
音質はどうか。これが、実にほぐれた音なのである。ピアノ音楽を演奏した時の、歪みなく揺るぎない安定した音の伸びと自然でリニアな減衰に、ジッターの少なさを体感させる。アンドラーシュ・シフのベートーヴェン作品101は、左手と右手の音色のコントラストが抜群に美しい。立体感豊かで響きと音色が実に変化に富み豊かである。一音一音の解像感が抜群に高く、基音と倍音のバランスが美しく整っている。
エレーヌ・グリモーのバッハも素晴らしい。量感を狙った録音だが、それを損なわずに透明感を湛えていて、深い求心力を備えている。低音の重なり合うパッセージでの分解能が素晴らしく、瀑布が崩れ落ちるようなクライマックスでは、音が渦を巻く深い水底に連れ去られるよう。酔わせるピアノ音楽。のびやかで透明感あるピアニズムである。クレア・マーティンのジャズ・ヴォーカルで印象的なのは、ヴォーカルとバックのギターの対比と寄り添い方。ギターがこれだけ実在感豊かに前に出てヴォーカルに親密に寄り添ったことはなかった。ラックスマン不変の形容詞≪しなやか≫の真骨頂をこの瞬間聴いた。(大橋 伸太郎)
ラックスマンD-05(SACD/CDプレーヤー)¥315,000(税込)
■対応ディスク:2チャンネルSACD、CD(SACDマルチチャンネルに非対応)
■アナログ出力:アンバランス 1系統、バランス 1系統
■デジタル出力 (44.1KHz、CD/CDレイヤーのみ) :同軸1系統、光1系統
■デジタル入力 (32, 44.1, 48, 88.2, 96KHz対応):同軸 1系統、光2系統
■周波数特性:CD:5Hz~20KHz(-0.4dB)、SACD:5Hz~50KHz(-3dB)
■全高調波歪率:0.0014%(CD時)、0.0017%(SACD/DSD時)、0.0007%(DIGITAL IN時)
■S/N比:124dB(CD時)、104dB(SACD時)、122dB(DIGITAL IN時)
■消費電力:20W(電気用品安全法)、1W(スタンバイ時)
■外形寸法:440W×133H×410Dmm
■質量:14.7Kg
■問合せ:ラックスマン
本社サービスセンター 〒222-0033神奈川県横浜市港北区新横浜1-3-1
TEL:045-470-6993 FAX:045-470-6997
http://www.luxman.co.jp/ |
|