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「アイ・フラットヘッド/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-12997) 05年の『チェヴス・ラヴィーン』、07年の『マイ・ネーム・イズ・バディ』と、立て続けに物語性豊かな意欲作を発表してきたライ・クーダーが、その2作とあわせて≪カリフォルニア3部作≫構成するものだという新作を早くも完成させた。この『アイ・フラットヘッド』は自ら書き上げた100頁超の小説を音で描いたものと説明できる作品で、本人はクーダー版ホンキートンク・ミュージックと説明していた。50年代にラジオから聴いたマール・ハガードらの音楽へのオマージュでもあるという。車好きのミュージシャンと謎のエイリアンが主人公の小説はかなり読み応えのあるもので、アメリカではCD+BOOKのバージョンも発売される。ちなみにクーダーは、たいへんな読書家。今回の作品に繋がる存在としては、チャンドラーやエルロイの名をあげていた。(大友 博) |
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「クレヨン/ドナ・サマー」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1882)
実に17年ぶりのフル・アルバム。この間、レコーディングから離れていたわけではないが、インターバルを感じさせないテンションの高さはドナならでは。スケールの大きなダンス・アンセムからブラジリアン・テイスト、ゴスペルなど、様々なタイプのサウンドをバックにスタイリッシュな熱唱を聴かせる。ダニエル・ブリスボアやグレッグ・カースティンら、主要スタッフをニュー・エイジの若者に絞っているが、70年代からのスタイルを堅持している点はさすがだ。ディスコやR&Bで語られることが多い人だが、ロック・ミュージカルからスタートしている人だけに、ロック的なグルーヴが魅力になっている。(村岡 裕司)
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「レイ・イット・ダウンー愛の詩/アル・グリーン」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70510)
素晴らしきソウル・シンガー、アル・グリーンの新作はアンソニー・ハミルトン、コリーヌ・ベイリー・レイ、ジョン・レジェンドらとのコラボレーション・ナンバーを鏤めながらまたまた1960年代後半から僕らの親しみ続けてきたあのソウルフルなメンフィス・サウンドをしみじみとした雰囲気の中で味わわせてくれる。ブルーノート・レーベルの3作目。不変ともいえるファルセットをしっかりとフィーチャーしたアル節がアルバム全体を包み込んでいる。日本盤ボーナス・トラック、ライヴ・ヴァージョン「パーフェクト・トゥ・ミー」もとてもドラマティック!(Mike M. Koshitani)
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「シーイング・シングス/ジェイコブ・ディラン」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1903)
アメリカの人気ロックバンド、ザ・ウォールフラワーズを率いるジェイコブ・ディランの初ソロ・アルバム。バンドでのジェイコブとは対照的に、ここでは全曲ほぼアコースティックでじっくりと聞かせてくれる。故ジョニー・キャッシュの傑作『アメリカン・レコーディングズ』のプロデュースで高い評価を受けたリック・ルービンの、徹底的に装飾をはぶいたシンプルなサウンドがジェイコブの新たな魅力をみごとに引き出している。偉大な父親、ボブ・ディランの『血の轍』(オリジナル・ヴァージョン)、あるいはブルース・スプリングスティーンの『ネブラスカ』や『トム・ジョード』を連想させるこの作品は、ジェイコブ・ディランの世界観をまったくフィルターを通さずに生のまま映し出しているようだ。華麗な音があふれる現代に、奇跡のような純なアルバムだ。なお、ジェイコブはフジロック08最終日の出演が決定している。(菅野 ヘッケル)
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「RESURRECTION/KAMERA」(テイチクエンタテインメント/TECI-24483) これってビミョーにおもしろい♪聞く人によっては‘何を今さら’とか‘80sニュー・ロマンティックの二番煎じ’だの一刀両断。。。かも知れない。たしかにかつて耳タコのデュラン・デュラン等の楽曲を思わせたりもするが「あっけらかんとあからさまにそんなことしてもええのかい?」と彼らの屈託のなさ?にあきれながらもしっかりとツボを心得たキャッチーなビート・ポップス(ふるっ)に仕上げているところに魅かれてすでに数曲もオン・エアしてしまった♪スウェーデン出身の5人組キャメラに確固たる音楽的指向があるかどうかよりも‘この手があったんか’と俗っぽい興味を抱かせられてしまった次第。(上柴 とおる)
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「アバウト・タイム/スティーヴ・ウィンウッド」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1859~61)(2CD+DVD) 自主レーベルからのリリースだったこともあり、過小評価されていたような気がしてならないのだが、03年の『アバウト・タイム』は、ウィンウッドが強く原点回帰を意識して取り組んだアルバムだったと思う。80年代的サウンドや方向性からの完全脱却を目指したもの、といってもいいだろう。そこから彼は、クラプトンとの共演でも話題を集めた新作『ナイン・ライヴズ』へと向かっていったわけだ。これは、その『アバウト・タイム』に4曲のライヴ・トラックと3曲入りのライヴDVDを加えたデラックス版。あらためて『ナイン・ライヴズ』とあわせて聴くと、ウィンウッドの想いがより強く伝わってくるはず。(大友 博)
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「レズリー・ウェスト/マウンテン」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1778)
「異邦の薫り(ライヴ・イン・ジャパン)/マウンテン」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1784~5)
来日35周年を記念して、マウンテンの全8タイトルが6月25日に、紙ジャケ仕様でリリース。中でも注目は、まず国内初CD化の『レズリー・ウェスト/マウンテン』('69年作)。これはフェリックス・パパラルディのプロデュースのもと制作された、レズリー・ウェストのソロ・デビュー作。“マウンテン”というのは、ウェストの巨漢から来るニックネームだった。この作品をきっかけとして、栄光のマウンテンは結成される。もうひとつは、'73年8月の大阪厚生年金会館でのライヴを収録した『異邦の薫り(ライヴ・イン・ジャパン)』('73年作)。今回発見されたSQ4chアナログ・マスターから、当時のエンジニアである鈴木智雄氏がリマスタリングを施した逸品だ。さて、パパラルディとウェストの才能のあり方と、その方向性はまったく別ものだった。それらが化学変化を起こして素晴らしい音楽を作り上げていく過程と、それが崩壊していく様……全作を通して聴くときに浮かび上がってくるその軌跡が、美しくも、哀しい。(細川 真平)
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「センチメンタル・ジャーニー/リンゴ・スター」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70504) 1970年3月発売のスタンダード作品集が紙ジャケで発売。プロデュースはジョージ・マーティンで、アレンジは曲ごとにポール・マッカートニー、クインシー・ジョーンズら一流どころが担当。ジャケット写真はリンゴの母が働いていたこともあるリバプールのエンプレス・パブ。ビートルズという重荷から解放されたリンゴが、デビュー前のリバプール時代を懐かしむかのように、自分の好きだった曲を楽しそうに歌っている。その雰囲気がいい。(広田 寛治)
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「カントリー・アルバム/リンゴ・スター」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70505)
1970年9月発売のカントリー作品集が紙ジャケットで発売。カントリー界随一のスティール・ギター奏者ピート・ドレイクがプロデュースしてナッシュビルで録音。バックにはエルヴィス・プレスリーのバックで知られるスコッティ・ムーアの名も。ボーナス・トラックは「クーチー・クーチー」と「ナッシュビル・ジャム」の2曲。地味なアルバムだが、ヴォーカリストとしてのリンゴの魅力が味わえる。(広田 寛治)
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「リンゴ/リンゴ・スター」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70506)
1973年11月発売のビートルズ再結成的作品集が紙ジャケで発売。リチャード・ペリーがプロデュースし、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンが、それぞれ曲を提供し演奏にも加わるという、いまとなっては夢のようなアルバム。ボーナス・トラックは「ダウン・アンド・アウト」「明日への願い」「1970年代ビートルズ物語」の3曲。全米2位のヒットとなったリンゴの魅力全開のアルバム。(広田 寛治)
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「グッドナイト・ウィーン/リンゴ・スター」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70507) 1974年11月発売の豪華ゲストを迎えた作品集が紙ジャケで発売。前作に続きリチャード・ペリーがプロデュース。オノ・ヨーコから離れて「失われた週末」をエンジョイしていたジョン・レノンがタイトル曲などを提供し、2曲で演奏に加わっている。ほかにも、エルトン・ジョン、ドクター・ジョン、ハリー・ニルソンら豪華メンバーが参加。ボーナス・トラックは「バック・オフ・ブーガルー」「ブラインド・マン」「シックス・オクロック(ロング・ヴァージョン)」の3曲。ソロ・ミュージシャンとしての多彩なリンゴ色を完成させたアルバムでもある。(広田 寛治)
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「ディスコ・ゴールデン・エイジ~ディスコ DE フィバろう!/VA」
(BMG JAPAN/BVCM-34075) この作品の選曲を担当した。手前味噌になるが、イメージ通りの内容になったのでPRさせていただく。70年代のディスコ・クラシックを全21曲パックした作品だが、これまでこの手のコンピには許諾が下りなかったバリー・マニロウの「コパカバーナ」から、日本の盆踊りで隠れた人気があるボニーMの「バハマ・ママ」まで、貴重な曲を沢山収録出来たからだ。アラベスクやホール&オーツ、ヒューズ・コーポレーションらの定番から、日本では久しぶりのアマンダ・レアやエラプションまで、本当にこの時期のヒット曲は楽しい。当時のファンだけでなく、新しい世代の人々にもエンジョイしてもらいたいと思う。(村岡 裕司)
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「ゴーストバスターズ/オリジナル・サウンドトラック」(BMG JAPAN/BVCA-1041) 6月に全18タイトルがリリースとなる<NOW & FOREVER>は、エヴァーグリーンな人気を誇るサントラのエセンシャル・シリーズ。プレスリーからモリコーネ、マンシーニ、ミュージカル、幕の内コンピ風など、豊富なカタログを擁するBMG音源ならではの内容だ。その一枚となる「ゴーストバスターズ」は、アナログ時代には入っていなかったトランプスの「ディスコ・インフェルノ」とレイ・パーカーJr.の別テイクを収録。DVD同様CDもアップグレードが大きなポイントになっただけに、充実したコンセプトだ。(村岡 裕司)
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「ライヴ・イン・エヴァンストン 1980/レコーズ」
(エアー・メイル・レコーディングス/AIRCD-076) パワー・ポップ・バンドというと、英国だとパイロットにバッドフィンガー、米国ではラズベリーズ、ザ・ナック、チープ・トリックといった名が真っ先に挙がるが、そういった大物以外にも素晴らしいバンドは、世界中にウヨウヨといたのだ。現在は音楽評論家としても活躍しているウィル・バーチが在籍していた、英国出身のレコーズもそのひとつ。本作は80年秋に米イリノイ州で行なわれたライヴを完全パッケージしたもので、新メンバーとして、あのジュード・コールが加わった直後のものだ。とにかくビートルズ直系の遺伝子と、当時のニュー・ウェーヴが混ざり合っての、ポップでマイティでビーティーな彼らのサウンドに今一度、耳を傾けてほしい。24ビット・リマスタリング。(小松崎 健郎)
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「時代はサーカスの象にのって/頭脳警察」(Idol Japan Records/JRDF-0018) 1970年頃に、日比谷野音や浦和ロックンロールセンター主宰ライヴなどで時を過ごした者には忘れられない頭脳警察。再結成ではなく、活動をそれ以来、ずっと継続していたという見地にたって、再始動のニュー・シングル「時代はサーカスの象にのって」がリリースされた。オリジナル楽曲を録音・発表するのは、1991年の8thアルバム「歓喜の歌」以来実に17年ぶりのこと。タイトルでピンとくる人がいると思う。1984年に行われた寺山修司 追悼公演のタイトルであり、詞は寺山詩を元にしている。寺山=PANTAの組み合わせに呼応するかのように、和風のメロディーに接近しているところは、想い新たに胸ときめかす人が多いと思う。まとまりを示すバンド演奏に、この夏の数々のフェスやイベントへの出演への期待がほとばしる。(サエキ けんぞう)
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「ビャビー・パヒヌイ・ウィズ・ザ・サンズ・オブ・ハワイ」
(オーマガトキ/OMCX-1195) ハワイアンが季節と共に戻ってきている中で注目株を。オールド・ハワイアンからコンテンポラリー・ポップ隆盛へ。そして70年代にハワイアン・ルネッサンスを迎える原動力となったのが、ハワイアン・フォークの神様ともいわれたギャビー・パヒヌイ。名手である彼のスラックキイ・ギターは絶妙。伝統を踏まえながらモダンで粋の極みだ。独自の歌声と共に、今聴いても新鮮で魅了され、体が軽くなる快感がある。そのギャビーを中心に、エディ・カマエの初CD化や名歌手パラニ・ヴォーン、サンディ・マノア等の貴重なFULAとTRADEWINDS音源がリマスターされて6~7月に6枚ずつ発売される。夏だけでなく快調。(鈴木 道子)
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「Destiny/The Brothers Cazimero」(Mountain Apple/MACD2119) *輸入盤 コンテンポラリー・ハワイアン・ミュージック界にあってかけがえのない存在の兄弟デュオ、ザ・ブラザーズ・カジメロの最新作。2004年に発表されたグラミー賞ノミネート作品「Some Call It Aloha」、2006年の「クリスマス・ソング集」に続く新作で、ソロ・アルバムを含めて通算37作目。3曲のトラディショナルを含めた12曲はいずれも熟成した安定感を感じさせる。彼らの長年の業績に対しハワイ・レコード芸術協会は今年(2008年)特別功労賞を贈呈した。(三塚 博)
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「TRIBUTE TO GEORGE KAWAGUCHI/川口雷二 THE NEW BIG4+1」
(HIYO RECORDS/XQBD-1005) 息子でドラマーの川口雷二が亡き父親のジョージ川口に捧げた作品集。中で一曲「ジョージズ・ブギ」ではジョージの音源とドラム・バトルも行なうという興味ぶかいアルバムだ。雷二は現在ニュー・ビッグ4+1をひきいて活躍しており、雷二のドラムもこのところ成長著しいものがある。ここではニュー・ビッグ4+1の連中、中村誠一、岡野等(tp)、市川秀男(p)、水橋崇(b)らが力強い、ハード・バップやファンキーな演奏を展開する。「ウォーターメロン・マン」にはさまれての「キャラバン」「モーニン」や「フィルシー・マクナスティ」「カンタループ・アイランド」などの熱いプレーはエキサイティングだ。(岩浪 洋三)
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「LAN/大城 蘭」(ハッツ・アンリミテッド/HUCD-10044) 沖縄出身の新進ジャズ歌手で、本作がデビュー作。都内のライヴ・ハウスで歌ってきたほか、6月15日には新宿のジャズ・スクランブルに出演し、千数百人の前で歌った。沖縄出身者らしい美声もさることながら、ソフトで、やさしい魅力的な声と表現をもっており、キュートで、ちょっぴりセクシーなところもあり、一度聴くと忘れられなくなる歌手だ。なつかしい戦後のヒット「ヴァイア・コン・ディオス」や「モナ・リサ」「サイド・バイ・サイド」に新しい光を当てているが、日本の流行歌で西田佐知子が歌っていた「アカシアの雨がやむとき」も彼女にぴったりだ。大型新人の登場だ。平岡雄一郎(g)を中心にしたアコースティックなサウンドと彼の編曲もいい。(岩浪 洋三)
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「ハレルヤ~サマー・オブ‘86~/安富祖 貴子」
(M&Iミュージック/MYCJ30465)
やはり沖縄出身のジャズ歌手だが、こちらは早くも3枚目。今回は井上陽介がサウンド・プロデュースしており、一層ソウル度を強めた歌になっている。ニューヨーク録音で、グラディ・テイト(as)、ジョン・デイ・マルティーノ(p)、アンドリュー・ビールス(as)、ビル・イーズリー(ts)、敦賀明子(org)、井上陽介(b)らが加わり、熱いヴォーカルをバック・アップする。幅広い選曲も魅力だが、「ハーレム・ノクターン」のヴォーカル・バージョンは珍しいし、聴きものだ。「サマータイム」「サイドワインダー」「愛の讃歌」「ハレルヤ・アイ・ラブ・ヒム・ソー」「ダニー・ボーイ」と多彩な選曲で、これまで以上にワイルドで、パワフルな歌を展開するが、歌唱力が抜群なだけに、説得力がある。(岩浪 洋三)
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「Luminosity/ジャコモ・ゲイツ」(doubledave music/ddm3001)
キング・プレジャー、エディ・ジェファーソン系のジャズ・シンガー、ジャコモ・ゲイツの新作はDVD付。CDはスタジオ録音、DVDはライヴだ。共演メンバーもそれぞれ違う。チャーリー・パーカーのソロにエディ・ジェファーソンが歌詞をつけたヴォーカリーズの「Lady Be Good」をはじめ「Billieユs Bounce」など4曲を歌うDVDが特に素晴らしい。マーク・マーフィーやシーラ・ジョーダンと同じようにこの人は、自然に曲につながってゆく曲の前の語りが上手い。遅咲きなので4作目だが、内容の濃い作品だ。レコードで聞くよりライヴで聞いた方が魅力的な歌手のようだ。影響を受けた人たち、自分の歌のスタイルなどについて語っているインタビューも興味深い。(高田 敬三)
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「ミュージカル『蝶々さん』オリジナル・キャスト盤」(K-LINKS/KLCD-0303)
長崎出身の市川森一が長崎新聞に連載した小説「蝶々さん」のミュージカル化。プッチーニのオペラ「蝶々夫人」の史実を基に、制作: 砂田慎平、作曲: 島健、台本・作詞: 忠の仁、演出は宝塚の荻田浩一、その他日本人スタッフが作り上げた作品なので、違和感なく楽しめる。出演陣も島田歌穂、剣幸、戸井勝海、山本匠馬、小野妃香里、ほか日本ミュージカル界のスターを揃えている。2007年6月19日、シアター1010でのライブ録音。「羽根をなくした蝶」他、全25曲。DVDもある(BDV-27039)。(川上 博)
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「ワン・ウーマン・シリーズ Vol. 1/島田歌穂」(K-LINKS/XQCW-1001)
2007年10月10日、東京芸術劇場大ホールで開催された、島田歌穂コンサートのライヴ盤。「ドリーム・ガールズ」「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」「ジーザス・クライスト・スーパースター」「ジキルとハイド」「レ・ミゼラブル」「ジプシー」「ザ・ライト・イン・ザ・ピアッツァ」等からのミュージカル・ナンバーを日本語と英語で歌いまくる。島田歌穂の歌が堪能できる、楽しい1枚、全10トラック。(川上 博)
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Popular BOOK Review |
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「British Beat 監修:小松崎健郎」
(シンコーミュージック・エンタテインメント)
1960年代、英国のロック・シーンの夜明けから全盛期までの時代を、じっくりとかつマニアックに纏め上げた実に内容の“濃い”一冊だ。音楽界の背景や動向からアーティストやアルバムの紹介など、改めてビートルズやストーンズを先頭に世界のファンから一躍注目されるようになったあの時が甦る。リアル・タイムで60年代を過ごしたベテラン・ファンは勿論のこと、その後の若い、でも60年代をこよなく愛するロック・フリークにも十分に堪能してもらえる。後半の証言編も含めてのインタビューやコラムも読ませる。ここに登場するアーティストの英国盤LPを久しぶりにターン・テーブルに・・・、そんな気持ちにさせてくれるのが本書だ。(Mike M. Koshitani)
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Popular CONCERT Review |
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「円盤ジャンボリーSPECIAL」 5月1日~5日 渋谷/O-NEST
高円寺のイベント・スペース(といえばいいのか?)「円盤」の開店5周年を記念し、5月1日から5日まで約70ものアーティストやユニットが終結し、宴を繰り広げた。ぼくは4日に行ったが、“水中、それは苦しい”、“巨人ゆえにデカイ”、“おにんこ!”、“角煮”、“エーツー”など注目の面々が2フロアにわかれて垂涎のパフォーマンスをほぼ切れ目なくおこなうのだから、チケット代2000円は申し訳ないほど安い。母の日にちなんだ不気味な曲を歌った“巨人~”も素敵だったが、個人的に圧倒されたのはなんといっても最後にあげた3ユニット。期せずして全員女性である。彼女たちが紡ぎだすしなやかな越境音楽に触れると、自分が男であることになんだか気後れしてしまう。(原田 和典)
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「ペッカ・ピルッカネン・チューブ・ファクトリー」 5月22日 COTTON CLUB
ペッカ・ピルッカネンはフィンランドのアルト・サックス奏者。彼を知らなくても、今回の来日メンバーにサムリ・ミッコネン(ピアノ)、フィリップ・アウグストソン(ベース)が同行していたとなると、目の色を変えるジャズ好きも多いのではなかろうか。正直いって僕もサムリとフィリップ目当てで出かけた。楽器が身震いしているような鳴りには、ひたすらしびれた。ペッカは故ボブ・バーグ(テナー・サックス奏者)のフレーズを、かなり研究しているようだ。端正な音色なのに、音符の羅列はけっこうワイルド。そこがまた妙な聴き応えを生む。チューブ・ファクトリーはすでに数枚のCDを出しているが、この日のパフォーマンスは確実にそれを凌駕していた。だからライヴは面白い。 (原田 和典)
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「クリス・ボッティ」 5月29日 BLUE NOTE TOKYO とても人気の高い奏者だが、その主な理由は端正なルックスにあるという。しかし彼のプレーは本格派だ。最高峰のジャズ・トランペッターのひとりである故ウディ・ショウに師事し、ジョー・ヘンダーソンやキング・クリムゾンのメンバーと共演する一面も持っている。顔が悪く生まれていたらハードコアな路線に向かい僕のようなオタク男子から熱狂的に支持されていたかもしれない。CDでは甘口でポップな路線を行くクリスだが、ライヴでは奔放な即興演奏家としての一面も披露してくれる。ウディとの演奏経験を持つロバート・ハースト(ベース)など、アフリカ系アメリカ人で構成されたバック・メンバーも分厚い音でクリスを鼓舞していた。(原田 和典)
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「ライラ・ビアリ公演」 5月30日 COTTON CLUB ステージに登場するとまず靴を脱いで素足になり、自作の「ラディアンス」を弾き始める。カナダ出身のヴォーカリストでピアニストでもあるライラ・ビアリの初の日本公演は流麗なピアノ演奏でスタートした。風邪をひいたとかで、曲が終わる毎に水を飲む。そのせいだろう。最初はヴォーカルに“力”が感じられなかったが、それも尻上がりに改善され、美しく爽やかな高音がリリカルな魅力を放つ。プログラムはカナダのアーティストの作品を集めた最新作に沿ったもので、ブルース・コバーンの「ストールン・ランド」では工夫を凝らしたサウンドと激しいリズムで作者の意図を表現したかと思えば、しっとりとしたピアノの弾き語りを披露したり、スウィンギーな演奏を聞かせたりと、ジャズとポピュラーの枠を越えた自由闊達な演奏で超満員の聴衆を魅了した。(滝上 よう子)
写真提供:コットンクラブ 撮影:土居政則
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「NEW SHINJYUKU JAZZ SCRAMBLE」6月15日 新宿通り追分交差点 特設ステージ さる6月15日に、地下鉄東京副都心線の開通を記念して新宿と同地7つの百貨店が総力をあげて、ジャズ祭≪JAZZ SCRAMBL≫を野外のメイン・ステージと各デパートのサテライト・ステージで開催された。ぼくと越谷政義は企画から協力し、当日は司会も務めた。
メイン・ステージの野外席1000席はまたたく間に満員となった。ここでのしょっぱなはオルケスタ・デ・ラ・ルスとNORA。サルサで熱気が立ち込めたあとは、昨年ミュージック・ペンクラブ音楽賞も受賞したアルパのルシア塩満のさわやかなハープのサウンドに聴衆も酔っていた。3つ目のグループからはジャズで、まず、6月初めにCDが出たばかりの沖縄出身の大型新人歌手、大城蘭の登場。ソフトで甘い、やさしい歌声が魅力で、スタンダードや「ヴァイア・コン・ディオス」といったノスタルジックな歌がとても新鮮だった。
続いては若手の明日のジャズ界を担う人たちのモダン・ジャズ・オールスターズの演奏。吉野ミユキ(as)、日高憲男(tp)、岡田嘉満(ts)、西仲美咲(fl)を中心に「キャラバン」などが演奏され、ウイリアムス浩子が1曲歌った。若々しいエネルギーにあふれたフレッシュな演奏は大いに盛り上った。
メイン・ステージのハイライトは日野皓正クインテットで、アンコールも含めて7曲が50分間演奏された。曲もその場で決めるといった自由な演奏で、絶好調ぶりをみせた。熱く、烈しいプレーなのだが、サックス多田誠司とのアンサンブルも心地よく、また日野のトランペットはエネルギッシュで、目一杯のプレーなのだが、どこまでもメロディックで、エンタテインメントにあふれているのはさすがだった。舞台で日野は、新宿は若い頃から親しんだなつかしい街だと語り、この日出演できた喜びを語った。自作の「エッジス」「ナンタケット」「AM PM」を演奏したあと、仲のよかった亡き弟日野元彦(ds)の想い出を語ったあと、弟が ユ92年に「セイリング・ストーン」に収録したローリング・ストーンズの「レディ・ジェーン」を演奏した。現在日野のバンドで演奏しているドラマー、和丸は沖縄出身で17歳だが、弟元彦の後継者として、日野は彼を厳しく、しかし愛情をもって育てているようだ。アンコールには、ポピュラーな「イン・ア・リトル・スパニッシュ・タウン」を演奏し、聴衆を大いに湧かせた。なお、日野は7月初旬に「ピット・イン」に出演したあと、8月29日には国際フォーラムで行なわれる東京JAZZにクインテットで出演する。東京ジャズは8月29日(金)から8月31日(日)まで3日間行なわれ、30日、31日は昼夜2回の別プロによるコンサートが行なわれ、ロン・カーター・カルテット、デビッド・サンボーン、ハンク・ジョーンズのグレイト・ジャズ・トリオ、上原ひろみ、熊谷和徳、NHK交響楽団、フォー・プレイ、リチャール・ガリアーノ、サム・ムーア、ミシェル・カミロ、そしてスライ&ファミリー・ストーンなどが出演する予定で、大いに盛り上るに違いない。(岩浪 洋三)
http://www.tokyo-jazz.com/index.html
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Popular INFORMATION |
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「ビリー・ジョエル日本公演」 アルバム・トータル・セールス1億枚突破のスーパー・ピアノマン、ビリー・ジョエルが2年ぶりに来日公演を行う。初来日30年。彼の名声を決定付けた名盤『ストレンジャー』発売30周年記念コンサート。7月23日に『ストレンジャー』30周年記念盤も発売。(S)
*2008年11月18日(火)19時
*会場:東京ドーム
*料金: S¥10,500, A\9,450
*チケット発売日:7月5日(土)
問合せ先:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/
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Classic ALBUM Review |
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「ベートーヴェン:交響曲全集Vol.3 第5番《運命》&第1番/パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン」(BMG JAPAN/BVCC-34166)
ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェン交響曲全集第3弾。なんと研ぎ澄まされた鋭い切れ味と溢れる気迫を感じさせてくれるベートーヴェンだろうか。その鋭さの中で一つ一つ説得力を持ったアーティキュレーションはヤルヴィの大きな魅力である。両曲とも全体的に相当速めのテンポで押し通す演奏は迫力とともに爽快感に満ちている。特に第1番第2楽章の速いテンポによって創り出される独特の清涼感は実に快適。そしてこのオケの上手さが小編成であるが故に特に目立っている。同様な傾向の演奏を聴かせるジンマン/チューリヒ・トーンハレ管と比較しても、この演奏は優位に立っている。(廣兼 正明)
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Classic ALBUM Review |
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「プロコフィエフ:交響曲第5番、組曲《キージェ中尉》/パーヴォ・ヤルヴィ指揮、シンシナティ交響楽団」(ユニバーサル ミュージック/UCCT-2071)
今月はこのところ斬新な演奏で人気沸騰のヤルヴィ来日に合わせての発売が重なった。このCDはテラーク原盤で気心の知れたシンシナティ交響楽団とのものである。前記のベートーヴェンとはまったく異なるヤルヴィの色彩感覚が、アメリカのオケを得て壮大さの中に諧謔性を持つプロコフィエフの代表的な交響曲と彼の初めての魅力的な映画音楽に大きな付加価値を与えている。 (廣兼 正明)
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Classic ALBUM Review |
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「バッハ・ミーツ・グバイドゥーリナ/アンネ=ゾフィー・ムター(Vn)、トロンハイム・ソロイスツ、ロンドン交響楽団、指揮:ワレリー・ゲルギエフ」(ユニバーサル ミュージック/UCCG-1404)
J.S.バッハのヴァイオリン協奏曲2曲と1931年旧ソ連のタタール自治共和国生まれの女流作曲家、ソフィア・グバイドゥーリナがアンネ=ゾフィー・ムターに捧げたヴァイオリン協奏曲「今この時の中で」を、ムターがこの二人の作曲家に精神的な近似点を見いだしたとして組み合わせたCDが出た。バッハはムターの弾き振りでノルウェーを代表するトロンハイム・ソロイスツと、グバイドゥーリナはゲルギエフ指揮のロンドン交響楽団が伴奏を務めている。非常に意欲的なムターはこのところ弾き振りでのコンサートやCD、DVDも多い。このCDを聴くとき、彼女のバッハは正に几帳面、音符の一つ一つに彼女の音楽が息吹いており、それはトロンハイム・ソロイスツの一人一人にまで完全に浸透している。一方グバイドゥーリナの曲はこのCDのライナーノーツに依ると、ムターと名前が似ていることからインスピレーションを受けて書いたと言われる聴き易い曲で、ムターも非常に近親感を持っており、緊張感の中にも奥深さに富んだ演奏と言えよう。(廣兼 正明)
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「プリモ PRIMO|神尾真由子デビュー/神尾真由子(Vn)、ヴァディム・グラドコフ(Pf)」(BMG JAPAN/BVCC-38492~93〈DVD付き初回限定盤〉、BVCC-34165〈通常盤〉)
BMGが専属契約をした2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクール優勝者、神尾真由子のデビュー盤である。小学生の頃から完全主義の天才少女と言われてきた神尾も21歳を迎え、ようやくレコーディングを解禁、記念すべき第一弾としたのがこのCDである。そして今回の選曲は彼女自身によるものとなっている。「カルメン幻想曲(ワックスマン)」、「ワルツ・スケルツォ(チャイコフスキー)」、「神話(シマノフスキ)」、「瞑想曲(チャイコフスキー)」「詩曲(ショーソン)」、「イタリア組曲(ストラヴィンスキー)」と並んだ曲に彼女の意欲がありありと見える。演奏は若さに溢れており、素晴らしいテクニックに加え音楽的にもほぼ完成の域にあると言える。初回限定みのDVDには「カルメン幻想曲」演奏とインタヴューの映像が収録されている。使用楽器はサントリーから貸与されたヨーゼフ・ヨアヒムが使用していた1727年製のストラディヴァリウス。(廣兼 正明)
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「渡辺玲子/カルメン・ファンタジー/ワックスマン:カルメン幻想曲、サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン、クララ・シューマン:3つのロマンス、シマニフスキ:神話-3つの詩、パガニーニ~シマノフスキ編:カプリース第24番/渡辺玲子(vn)、江口玲(pf)」 (avex-classics AVCL-25197)
ニューヨークを本拠に意欲的な活動を続ける渡辺玲子と江口玲の実力派コンビによる新盤。変化に富んだ選曲なのに、どれも愛奏曲なのか見事に手の内に収められ、安心して音楽に浸りきれる。豊麗な歌心とファンタジーにあふれる奔放な演奏でありながら、確かな構成力も聴かせ、ヴァイオリン音楽の魅力を実感させる。勘所を心得た巧みな表現は、彼らの豊富なキャリアを物語るものだろう。シマノフスキでのヴァイオリンの多彩な技巧と音色の美しさは特筆すべきだし、ピアノ・パートの創意と遊び心も素晴らしい。ハイブリッド盤なのでCDと聴き較べたが、SACDマルチチャンネルの特質も存分に活かされている。(青澤 唯夫)
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「エバーグリーン岩井直溥作品集/東京佼成ウインド・オーケストラ」(佼成出版社/KOCD3025)
編曲家岩井直溥がジャズの音楽を吹奏楽に初めて取り込んだすばらしい歴史的な作品集である。1972年「A列車で行く」を始めとする多くのポップス音楽を「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」として(ヤマハ)から吹奏楽に紹介した。全日本吹奏楽連盟の吹奏楽コンクール課題曲として、1972年「明日に向かって」、1975年「未来への展開」、1976年「メインストリートで」、1978年「かぞえうた」、1989年「すてきな日々」など、ビックバンドの世界を吹奏楽に導入した功績は大きかった。そんな氏の代表作品とその後のオリジナル作品とを収録した画期的なCDである。ポップス・ファンにとっても楽しめる一枚であろう。(齊藤 好司)
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「ロッシーニ《ランスへの旅》」5月10日 いずみホール
関西では初演となったこの出し物は、とにかく賑やかである。シャルル10世の戴冠を祝う祝祭オペラで、中味はオペレッタに近い。式典の行われるランスを目指して旅立った名士たちは、様々なトラブルに巻き込まれて中止となり、逗留先のホテルで恋のアラベスクが展開されることになる。関西の実力派をそろえた中で、佐藤美枝子(コリンナ)の絶妙な歌唱が光り、尾崎比佐子(フォルヴィル伯爵夫人)も華やかなコロラトゥーラで応じた。男声では井原秀人(シドニー卿)、萩原次己(アントーニオ)らが健闘した。
演出家岩田達宗のプロデュースで、中ホールが会場に充てられた。登場人物が多く、岩田は客席やバックステージも舞台に見立てて、空間を有効に使った。主役らしい主役はなく、アンサンブル・オペラの性格が強い。ともすれば印象が散漫になりがちであるが、即興詩人のコリンナを浮かび上がらせて、ドラマに結節を与えたのは、一つの試みであり、納得させられた。(椨 泰幸)
〈撮影:樋川智昭〉
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「ウィーン少年合唱団」5月17日 ザ・シンフォニーホール
今年もまた世界的に著名な少年合唱団がやってきた。南へ北へほぼ2ヶ月近く演奏を続け、しかもどのホールでも満席になる。ポップ歌手顔負けの人気の秘密な何だろうか。「歌が飛び切りうまい」「天使の声」「かわいらしい」 あらゆる賛辞が少年たちに寄せられる。聴衆はその声にすっかり魅せられ、満足して帰路につく。だが、そればかりではない。毎年工夫を凝らして来日するところに、人気の根源があるようだ。
合唱団に所属する4つのグループのうち「シューベルト組」25人が来日した。指揮者のアンディ・イコチェアさんはペルー人で、3年前に就任したばかり。そこには厳しい表情は少しもない。にこやかに聴衆に挨拶し、日本語もなかなかのものである。これで客席との距離がぐっと縮まる。12歳の日本人団員ヒビキ君も登場して、独唱した。少年たちが打楽器類を使ってパフォーマンスを試み、日本のヒット曲も歌って、喝采を浴びた。常に聴衆と歩む姿勢を失わない限り、超絶人気は消えないだろう。ゥLukas Becke(椨 泰幸)
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「フランクフルト放送交響楽団」5月30日 フェスティバルホール
ドイツの名門オーケストラが、気鋭の音楽監督パーヴォ・ヤルヴィに率いられてやってきた。エストニアの出身で、北欧やロシア音楽を得意にしているが、ドイツ音楽の粋ともいえるブラームス「交響曲2番」とベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番皇帝」を振った。牧歌的な旋律の流れるブラームス作品は、ベートーヴェンの田園交響曲にたとえられるが、ヤルヴィはオケに自然の空気をたっぷり吸わせ、おおらかに歌い上げた。名指揮者ネーメを父に持ち、音楽に柔軟に対応するセンスのよさがうかがえる。いわゆる「オケとの相性」もよさそうだ。
ピアニストにはフランスの若手エレーヌ・グリモーが起用された。清新さにあふれ、アダージョ楽章にはどこか詩情すら感じさせた。しかし、ベートーヴェンがこの曲に込めた気宇壮大な精神には一歩及ばず、ダイナミックな造形をさらに深化させることが望まれる。(50回記念大阪国際フェスティバル参加)(椨 泰幸)
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「新国立劇場公演『椿姫』」6月5日 新国立劇場オペラ劇場
新国立劇場の2007-2008シーズンの最終演目は、ヴェルディの名作『椿姫』。ルカ・ロンコーニの手になるプロダクションの、3度目の上演である。
今回の目玉は、主役ヴィオレッタを歌ったルーマニアのソプラノ、エレーナ・モシュク。コロラトゥーラを得意とし、チューリヒやスカラでもこの役を歌っているモシュクは、柔らかな声と繊細かつ劇的な表現力、そして驚異的な弱音のコントロールで会場を圧倒した。ドイツの歌劇場で経験を積んだ指揮の上岡敏之も、オーケストラ(東フィル)から細やかな表現力を引き出し、『椿姫』がヴェルディ作品のなかでも飛びぬけて女性的であることを、歌手ともども確認させてくれた。(加藤 浩子)
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「ウィーン・フォルクスオパー来日公演『マルタ』」6月8日 東京文化会館
ウィーン・フォルクスオパーが久方ぶりに来日。定番の『こうもり』に加え、スッペの『ボッカチオ』、フロトーの『マルタ』という、現在の日本では上演の機会に恵まれない2作品を上演した。
1847年に初演された『マルタ』は、フロトーの代表作。ラブリーな物語と、イタリア・オペラの影響も感じられる美しいアリアあり、巧みなアンサンブルあり、グランド・オペラばりの絶叫ありと、変化に富んだ音楽が楽しめる佳品である。
専属歌手で構成されるソリスト、活力のある合唱、音楽の機微をわきまえたオーケストラ(エリーザベト・アットル指揮)、すべてが作品を「手のうち」にしていると感じられる、快い演奏。色彩あふれる舞台、照明ともに工夫があり、充実した公演だった。(加藤 浩子)
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「東京吹奏楽団第45回定期演奏会(創立45周年記念公演) 6月9日 紀尾井ホール
東吹は昭和38年に東京芸大教授の故山本正人氏と同校OBが中心となり、東京で初めて創立されたプロの吹奏楽団である。当初河合楽器の助成によっていたが、今日ではグローバルの支援を得ている。今回、45周年を迎えその長い歴史を誇っている。指揮者に汐澤安彦を、フルート独奏者に若い実力者デニス・ブリアコフを迎えすばらしい演奏会であった。曲は「ウィーンの朝、昼、晩」やコンクール課題曲と、「ヴェニスの謝肉祭」「ハンガリー田園幻想曲」「序奏とロンド・カプリチョーソ」を独奏で聴かせた。指揮はもち前の明晰さを発揮して俊敏な演奏であった。ややFlの独奏が長かったが充分聞き応えがあり上手だった。27歳で将来に期待の持てる若手のプレイヤーであった。(斉藤 好司) |
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「新日本フィル、クリスティアン・アルミンク音楽監督の任期再延長を決定」
新日本フィルは2008年6月4日、記者会見でアルミンク現音楽監督の契約を2011年まで2年延長すると発表した。
03年に現音楽監督を迎えてこの9月に6シーズン目に入る。これらの成果をもとに2009年8月下旬~9月初旬に中欧演奏旅行も予定し、これからその具体化に入るという。
会見で現音楽監督は、シーズン毎にテーマを1つ掲げてプログラミングしてきたこと、そして定期公演への現代音楽の導入に成功したことに自信を深めた。延長の2年間ではシーズン・テーマを設定せず、毎回、個別テーマで柔軟性を追求するという。
同音楽監督は会場からの質問に応え、同フィルの木管・金管楽器群のソリスティックな水準を高く評価すると同時に、統率力ある楽団の力に期待。今後の目標として、豊かな個性が「他を引っ張って行くシーン」を増やしたいと語った。(M)
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「ロータス・カルテット」9月25日午後7時いずみホール
1992年に結成され、93年の大阪国際室内楽コンクールで上位入賞を果たした。その後ドイツに渡り、メロス弦楽四重奏団の指導を受け、シュトゥッツトガルトを本拠地に活動を続けている。関西から世界へ音楽情報を発信させようと意気盛んである。メンバーは日本人3人、ドイツ人1人の構成で、常設の四重奏団であり、緻密な音楽づくりを目指している。演奏するのは古典派を代表するベートーヴェン「第3番」「第15番」と新ウィーン楽学派のウェーベルン「弦楽四重奏曲(1905)/6つのパガテル」。料金は一般4,000円。お問い合わせはいずみホール(06-6944-1188)へ。(T)
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「第2回ガスパール・カサド・コンクール開催」
2006年11月に日本で復活した「ガスパール・カサド国際チェロ・コンクールin八王子」の第2回が、今年2009年11月27日から12月6日まで10日間にわたって開催される。会場は八王子市芸術文化会館・いちょうホール。審査委員は堤剛、倉田澄子、山崎伸子、アルト・ノラスほか9氏。バッハの無伴奏チェロ組曲やベートーヴェンのチェロ・ソナタなども課題曲に含まれるので、チェロ音楽好きの方には楽しみなことだろう。本選会は東京フィルとの共演となる。
問い合わせ先:ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール実行委員会
電話:042-631-0705 ウェブサイト:http://www.cassado-cello.jp (A)
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