★ホール全体が立体的に響く、圧巻の「ローマの松」
やはり演奏は「生」には敵わない!
2009年4月23日(木)、東京吹奏楽団の第56回定期演奏会がすみだトリフォニーホールにて開催された。今回のプログラムは、第1部がオリジナル曲、第2部がイタリア音楽という構成となっている。昨年に続く、吹奏楽コンクール課題曲の生演奏が聴ける「春の定期演奏会」という事もあって、それを目当てに来る観客も多かったのではないか。
指揮者である岩村力氏と東吹の共演は10数年ぶりらしく、東吹のラブコールによって実現したのだとか。公演中に指揮者本人も言っていたのだが、吹奏楽を振ることがあまり多くない方なので、東吹との共演でどのような音楽を聴かせてもらえるのか楽しみにしてきた。
オープニングは、D.ホルジンガー『エイブラムズ・パーシュート』。
教会の作曲家であったホルジンガーによる、聖書を題材にした描写音楽だ。と言っても堅い曲調ではなく、いかにもホルジンガーという感じの変拍子が組み込まれたリズミックな音楽で、コンサートの幕開けを爽快に飾った。
続いては、本年度吹奏楽コンクール課題曲の中から、Ⅰ.諏訪雅彦『16世紀のシャンソンによる変奏曲』、Ⅲ.平田智暁『ネストリアン・モニュメント』、Ⅴ.江原大介『躍動する魂 ?吹奏楽のための』の3曲。やはりこの課題曲を聴きたくて来た人は多いようで、中には楽譜やスコアを取り出す人も。とりわけ中高生のみなさんは真剣な面持ちに見えた。
第1部のメインとして最後に演奏されたのは、R.ネルソン『ペブル・ビーチ・サジャーン』。
タイトルの「ペブル・ビーチ」はアメリカ有数のリゾート地で、「サジャーン」とは滞在の意とのこと。岩村氏の推薦もあってプログラムに入ったという、吹奏楽(といっても金管楽器と打楽器のみ)とパイプオルガンのために作られたこの曲なのだが、そのサウンドには本当に驚かされた! 私が編成から想像したサウンドは、重厚さや迫力のある感じだったのだが…全然違う。温かく鮮やかで、まさにカラフル。リゾート地を想像させる豪華絢爛な音楽だった。
続く第2部はイタリア音楽のプログラム。まずはG.ロッシーニ『歌劇「泥棒かささぎ」序曲』、続いてG.プッチーニ『歌劇「トゥーランドット」より』。
演奏前に指揮者による曲の解説が入り、客席がイタリアの情景を想像してる中での演奏。どちらの曲も聴きやすいライトな演奏で、特にトゥーランドットはあまり歌い込み過ぎずあっさりとした印象だった。しかしその分、曲中の場面の切り替えを受け入れやすい感覚もあったので、セレクションものをやる時はこういった演奏もいいかもしれない。(好みがあるとは思うが。)
そして最後は、O.レスピーギ『交響詩 ローマの松』。
曲を通して楽器や旋律のそれぞれがはっきりと聴こえ、これこそクリアーなサウンドといった感じだ。3楽章の終わりでナイチンゲールの声が聴こえて来た時には、会場からざわめきも。最後はパイプオルガン、そして3階バルコニー席からのバンダを加え、ホール全体が立体的に響く中、勇壮に曲を閉じた。
そして鳴り止まない拍手に応えるアンコールは、P.マスカーニ『歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲』、そして本年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ.藤代敏裕『マーチ「青空と太陽」』、さらにH.フィルモア『サーカス・ビー』。
最後の最後まで期待を裏切らないプログラミング、そして岩村氏の熱のこもったダイナミックな指揮、東吹のサウンドが見事にコラボレーションした春の定期演奏会であった。
帰りの錦糸町駅のホームでの話だが、演奏会に来ていたらしい中学生や高校生が、テンションの高い様子で話しているのを何組も見かけた。きっとこの子たちにとって、今日の演奏が大きな目標の一つとなっていくのだろう。CDやDVD、ポータブル・プレーヤで聴く音楽も悪くはないが、やはり「生」には敵わない!
■東京吹奏楽団の公式HP http://www.tousui.jp/
【東京吹奏楽団CD】
■ 時任&東吹~スパーク、チェザリーニ、パーシケッティ~
東京吹奏楽団/時任康文
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1607/
■エクウス~エリック・ミーツ・東吹~
東京吹奏楽団/エリック・ウィテカ
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1606/
■ 序曲「1812年」/Ouverture "1812"
東京吹奏楽団/汐澤安彦・指揮
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1605/
(2009.05.02)
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